宮島達男

宮島達男：光と時間、そして生命の芸術

宮島達男（1957年生まれ）は、現代美術の第一線で活躍するアーティストです。東京藝術大学卒業後、油絵からLEDを用いたデジタルアートへと転向し、独自の表現世界を確立しました。彼の作品は、発光ダイオード（LED）が刻む数字の明滅を通して、時間の流れや生命の循環、そして人間の存在について問いかけています。

デジタルカウンター：永遠の循環

宮島作品を象徴するのが、デジタルカウンターを用いたインスタレーションです。無数のLEDが「1」から「9」までを繰り返し表示し、決して「0」にならないその様は、東洋思想における輪廻転生を想起させます。個々のLEDの明滅速度が異なることで、静寂の中にダイナミズムが生まれ、見る者に時間の流れを意識させます。東京都現代美術館の作品『それは変化し続ける　それはあらゆるものと関係を結ぶ　それは永遠に続く』（1998年）は、その代表例と言えるでしょう。

デス・シリーズ：生と死の対話

「デス・オブ・タイム」「メガ・デス」「デス・クロック」からなる「デス・シリーズ」は、生と死という普遍的なテーマを、LEDを用いて表現した三部作です。「メガ・デス」では、壁面に埋め込まれた無数のLEDが、観客の特定の位置への移動によって一斉に消灯し、暗闇に包まれた後、徐々に再び点灯していく様子は、戦争や災害といった大量死の場面を思わせ、見る者に強い衝撃を与えます。「デス・クロック」は、購入者ごとにカウントダウンを設定できるCD-ROM作品で、個人の死生観を問いかけるインタラクティブな作品となっています。

社会参加型アート：時の蘇生

宮島は、作品制作のみならず、社会参加型のプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。代表的なのが「『時の蘇生』柿の木プロジェクト」です。長崎の原爆被災地で育った柿の木の種から育てた苗木を世界中に広げ、生命の再生と平和への願いを表現しています。これは、ヨーゼフ・ボイスの「7000本の樫の木」プロジェクトにインスパイアされたものであり、ボイスとの深い関わりも作品制作に影響を与えていることが伺えます。

国際的な評価

宮島達男の作品は、日本国内にとどまらず、世界各地で高く評価されています。ヴェネツィア・ビエンナーレへの出品や、数々の受賞歴（1998年ロンドン・インスティテュート名誉博士号、1998年日本現代芸術振興賞、2021年芸術選奨文部科学大臣賞など）は、その卓越した芸術性を証明しています。

まとめ

宮島達男の作品は、LEDという現代テクノロジーを用いながらも、東洋的な思想や生命への深い洞察を表現しています。時間と空間、生と死、そして再生という普遍的なテーマを、独自の視座で捉え、見る者に深い感動と問いかけを与え続ける、唯一無二のアーティストと言えるでしょう。彼の作品は、現代社会における人間の存在意義を問う、静かなるメッセージとして響き続けています。

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