小梅

小梅は、菓子メーカーのロッテが製造・販売している、梅の風味を特徴とするハードキャンデーです。その歴史は長く、1974年（昭和49年）に初めて市場に登場しました。

長年にわたり多くの消費者に親しまれてきた袋入りのノーマルタイプには、2024年3月12日のリニューアル実施以前、大きさが異なる二種類のキャンデーが混ざって封入されているというユニークな特徴がありました。一つは約直径1.5cmの「小玉」で、甘めの梅味の飴の中に、酸味が強い「梅ペースト」が入れられており、さらに表面には梅パウダーがまぶされていました。もう一つは比較的大きい直径約2.5cmの「大玉」で、こちらはパウダーが使われていないため、小玉に比べて酸味が控えめで甘さが際立つ味わいでした。

発売から50周年を迎える節目となった2024年3月12日には、商品の内容が大きく刷新されました。このリニューアルでは、主原料である和歌山県産の南高梅果汁の使用量が、従来の二倍にまで増やされています。加えて、新たに梅肉パウダーや梅ピューレといった成分が加えられ、梅本来の風味をより一層感じられるように改良が図られました。一方、それまで製品の特色の一つであった梅ペースト入りの構造は廃止され、単層のハードキャンディへと変更されています。また、以前は製品内に小玉と大玉が混在していましたが、このリニューアルを機にサイズが統一され、全てのキャンデーが同じ大きさになりました。

小梅のブランドイメージを構築する上で欠かせないのが、発売当初から一貫してコマーシャルに起用されてきたイメージキャラクター「小梅ちゃん」の存在です。著名な漫画家である林静一氏によってデザインされたこのキャラクターは、その愛らしさから人気を博し、1982年からは商品のパッケージにも描かれるようになりました。小梅ちゃんには、明治時代に生まれた15歳の少女で、早くに母を亡くし一家の家事を切り盛りしているといった、詳細なプロフィール設定が存在します。

CMの内容についても、単なる商品告知にとどまらず、深いテーマ性が追求されてきました。特に、「報われることのない、切ない恋」という一貫した物語性が描かれ、多くの人々の共感を呼びました。中でも、1975年に制作された『雪国』編と題されたCMは、主人公と相手が汽車での別れを迎える場面を描き、その芸術性が高く評価され、ベニス国際広告映画祭で銅賞、クリオ賞アニメ部門で特別賞を受賞しています。

小梅の世界観は、キャラクター設定にも奥行きを与えられています。小梅ちゃん自身はもちろんのこと、シニヨンに梅の花飾りをつけた容姿や、植木職人の父と暮らす家庭環境が設定されています。物語には、サラサラの黒髪が特徴の小彩や、おしゃまでしっかり者の小春、小麦肌で活発な小夏、そして妹のように慕われる小雪といった同世代の少女たちが登場し、小梅の日常や心情に寄り添います。そして、小梅の心ときめく憧れの相手として描かれるのが、綾小路家の息子である綾小路真です。彼は勤勉で将来有望な青年ですが、家の財政が傾き、自身の希望するイギリス留学か、家のためある高家の令嬢との政略結婚かの選択に苦悩するという設定があり、小梅との切ない恋の物語に複雑な要素を加えています。

公式ストーリーでは、小梅が父の弁当を届けに綾小路家を訪れた際に真と運命的な出会いを果たし、互いに惹かれ合うものの、身分違いの恋ゆえに周囲や状況がそれを阻もうとする様が描かれています。

小梅の世界観は、様々な形で展開されています。2006年には期間限定で、綾小路真をイメージキャラクターとした白葡萄味のキャンディー「小露」が姉妹商品として発売されました。また、ロッテからは小夏ぐみ（夏みかん味）、小彩ぐみ（りんご味）、小雪ぐみ（冬いちご味）、小春ぐみ（白桃味）といった、キャラクター名を冠した他のシリーズ商品も登場しています。さらに、異業種とのコラボレーションも行われており、サントリーとの共同開発による飲料「小梅ソーダ」が過去に販売されていました。その他、2013年6月には早稲田大学商学部のゼミと写真SNSアプリ「My365」が連携し、「小梅×My365 みんなの恋フォトコンテスト」という企画が行われるなど、多角的なプロモーションが展開されてきました。

なお、タレントの伊集院光氏がパーソナリティを務めるラジオ番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』の中では、当商品を題材としたパロディコーナー「俺の小まん」が放送され、一部のリスナーの間で話題となりました。

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