少年の君

『少年の君』：社会の闇と青春の光を描いた傑作

2019年、中国と香港の合作によって生まれた映画『少年の君』（原題：少年的你）は、社会現象を巻き起こした青春映画として知られています。監督はデレク・ツァン、主演はチョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーという、中国で高い人気を誇る若手俳優が務めました。原作は玖月晞によるオンライン小説『少年の君』ですが、映画版は結末が異なるなど、独自性も持ち合わせています。

重慶市での撮影は2018年7月から9月にかけて行われ、重慶独特の坂道や立体交差橋が印象的な映像美となっています。中国での公開は2019年10月25日、その後、世界各国で上映され、高い評価を受けました。日本でも2021年7月に劇場公開され、第15回大阪アジアン映画祭で観客賞を受賞するなど、その人気は日本にも波及しています。

ストーリー：いじめと、それに立ち向かう若者たち

物語の中心となるのは、成績優秀だが内向的な女子高生チェン・ニェンと、不良少年シャオベイの二人です。大学受験を間近に控えたチェン・ニェンは、進学校での激しいいじめや、貧しい家庭環境に苦しんでいます。一方、シャオベイは複雑な家庭環境から学校を辞め、社会の片隅で生きています。

ある日、チェン・ニェンはいじめに遭っているシャオベイを偶然目撃し、庇うことから二人の関係が始まります。次第に友情を深めていく二人ですが、チェン・ニェンはいじめのターゲットとなり、過酷な日々を過ごすことになります。やがて、事件が起こり、シャオベイが罪を被ることになります。

チェン・ニェンは、大学入試に合格しながらも、自身の罪を認め、刑務所に入ることを選択します。数年後、更生したチェン・ニェンは教師となり、再びいじめられている生徒を助ける姿が描かれ、物語は幕を閉じます。

キャストとスタッフ：実力派と若手スターの競演

主演のチョウ・ドンユイは、チャン・イーモウ監督作品でデビューし、高い演技力で知られる実力派女優です。一方、イー・ヤンチェンシーはTFBOYSのメンバーとして国民的アイドルでありながら、本作で映画初主演を務め、その演技力は高く評価されました。

他にも、ベテラン俳優から若手俳優まで、実力派のキャストが脇を固めており、彼らの演技が物語に深みを与えています。監督のデレク・ツァンをはじめ、制作スタッフも中国映画界で活躍する才能豊かな人材が集結しています。

映画的成功：興行収入と受賞歴

『少年の君』は、公開からわずか9日間で興行収入が10億人民元を突破するなど、中国で大きな話題となりました。最終的な興行収入は15.58億人民元（約243億円）に達し、2019年度中国映画興行収入9位、青春映画ジャンルでは歴代1位という記録的な大ヒットとなりました。

また、香港電影金像奨では作品賞を含む8冠を獲得し、第93回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされるなど、高い評価を得ています。

社会問題への鋭い視点：いじめと大学受験競争

本作は、青春映画としての魅力だけでなく、いじめ問題や熾烈な大学受験競争といった、現代中国社会の暗い一面をリアルに描き出している点も注目に値します。これらの問題に正面から向き合い、若者たちの苦悩や葛藤を丁寧に表現することで、多くの観客の共感を呼びました。

『少年の君』は、青春の輝きと社会の闇を同時に見せることで、観客に深い感動と衝撃を与え続ける作品です。中国映画史に残る名作として、今後も語り継がれていくことでしょう。

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