尿失禁

尿失禁の種類と原因、症状、治療法

尿失禁とは、自分の意志とは関係なく尿が漏れてしまう状態を指します。加齢とともに増加する傾向にありますが、年齢に関わらず発症する可能性があります。尿失禁には様々な種類があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。

1. 真性尿失禁（尿道外尿失禁）

尿路そのものに異常があり、尿が漏れてしまう状態です。尿管が本来あるべき場所と異なる位置に開口している場合や、膀胱と膣の間に瘻孔（ろうこう）と呼ばれる異常な管が形成されている場合などが原因として挙げられます。治療は、主に手術による尿路再建術や人工尿道括約筋の埋め込みなどを行います。

2. 仮性尿失禁

尿路自体には異常がないものの、周辺臓器の異常によって尿が漏れてしまう状態です。例えば、膀胱の容量が小さくなっていたり、排尿筋の機能が低下している場合などが含まれます。原因を特定し、それに合わせた治療を行う必要があります。

3. 切迫性尿失禁

強い尿意を感じた直後に尿が漏れてしまう状態です。これは、大脳（下行路）の障害によって起こる上位運動神経障害の一種で、無抑制性神経因性膀胱や過活動膀胱の症状の一つとされています。脳血管障害やパーキンソン病など、脳の機能障害が原因となることが多く、高齢者に多く見られます。治療には、抗コリン薬などの薬物療法が用いられます。抗コリン薬は、神経から筋肉への指令を抑えることで、不随意な膀胱収縮を抑制します。

4. 反射性尿失禁

反射的に尿が漏れてしまう状態です。これは、脊髄（下行路、上行路）の障害による上位神経障害の一種で、自動性（反射性）神経因性膀胱に分類されます。上位神経の障害により、尿意が脳に伝わらず、また尿道括約筋などを制御することができません。そのため、脊髄反射によって尿が漏れてしまいます。治療は、切迫性尿失禁と同様に、抗コリン薬を用いた薬物療法が中心となります。

5. 溢流性尿失禁（奇異性尿失禁）

膀胱に尿が溜まりすぎて、溢れてしまう状態です。神経因性膀胱や前立腺肥大などが原因として考えられます。神経因性膀胱の場合、下位神経の障害により、膀胱からの感覚情報が脳に伝わらず、また脳からの運動指令が膀胱に伝わらないことが原因です。前立腺肥大では、前立腺の肥大によって尿道が圧迫され、排尿が困難になることで起こります。治療は、用手排尿や自己導尿、前立腺肥大の場合は手術療法などが行われます。

6. 腹圧性尿失禁

くしゃみや咳、重いものを持つなど、腹圧がかかったときに尿が漏れてしまう状態です。特に35歳以上の女性に多くみられ、出産や肥満などが原因で骨盤底筋群が弱まっていることが大きな要因です。治療は、骨盤底筋体操などの骨盤底筋群の強化訓練が中心となります。

7. 機能性尿失禁

尿路系以外の身体的または精神的な問題が原因で尿が漏れてしまう状態です。例えば、脳卒中などによる片麻痺でトイレに間に合わない場合などが含まれます。原因となる身体的または精神的な問題への対応が治療の中心となります。

それぞれの尿失禁の種類において、適切な診断と治療を受けることが重要です。症状が気になる場合は、医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。

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