山崎川

山崎川：名古屋の豊かな自然と歴史を紡ぐ河川

山崎川は、愛知県名古屋市を流れる全長約14kmの二級河川です。古くは石川とも呼ばれ、その歴史は縄文時代にまで遡ります。最上流部は千種区の平和公園付近にあり、南西方向に流れ、昭和区、瑞穂区、南区を貫流し、最終的に港区で名古屋港へと注ぎ込みます。

源流から河口まで：変遷と特徴

山崎川の源流は、猫ヶ洞池などから始まり、上流部はかつて暗渠化された区間も存在します。現在では、千種区本山付近から、稲舟通沿い、そして田代本通を越えた大島町付近から河川としての姿を見せています。昭和区、瑞穂区にかけては、熱田台地と八事丘陵の間を縫うように流れ、中流域には瑞穂公園が広がり、桜並木が美しい景観を織りなしています。この桜並木は「山崎川四季の道」として有名で、日本さくら名所100選にも選ばれ、市民に親しまれる憩いの場となっています。

河川敷には親水広場も整備され、市民の散策路としても利用されています。また、1987年には国土交通省（旧・建設省）から「ふるさとの川モデル河川」に選定されるなど、環境保全の取り組みも積極的に行われています。

歴史：縄文時代から現代まで

約1万年前の縄文時代には、現在の瑞穂陸上競技場付近が河口であったと推定されています。その後、海面の後退や土砂の堆積によって河口は変化し、平安時代には新瑞橋付近まで移動しました。河川名の由来となった「山崎」という地名は、西暦717年の尾張古図にも見られ、古くからこの地域に存在していたことがわかります。江戸時代には下流部での新田開発により、流路が延長され、天白川との合流や分流などもありましたが、度重なる氾濫のため、元に戻された経緯があります。現在の河口付近の川筋は、安政3年（1856年）の氷室新田開発に伴って付け替えられたものです。

昭和初期には運河化計画もありましたが、戦後のモータリゼーションによって中止されました。戦後、上流域の宅地開発に伴い、水害の危険性も増大し、伊勢湾台風による破堤も経験しています。こうした経験を踏まえ、猫ヶ洞池からの排水設備整備や、導水施設の改良などが行われてきました。2007年には、愛知県から名古屋市へと管理権限が移譲されました。

支流と主な橋梁

山崎川には、五軒家川などの支流があり、多くの橋が架けられています。上流部から下流部にかけて、大小様々な橋が架けられており、その数は非常に多く、それぞれの橋が地域の生活や歴史を物語っています。特に下流部は、名古屋高速道路や国道、鉄道などが山崎川を横断しています。これらの橋梁は、交通の要衝としての山崎川の役割を示しています。

山崎川と地域社会

山崎川は、単なる河川ではなく、名古屋の歴史、文化、自然を象徴する存在です。桜の名所として、また水辺の憩いの場として、人々の生活に深く関わってきました。現在も、環境保全の取り組みや、親水空間の整備などを通して、地域社会に貢献し続けています。これからも、山崎川が名古屋の豊かな自然と歴史を紡ぐ、貴重な存在であり続けることを願っています。

参考文献

名古屋市叢書続編 第四巻『尾張徇行記』 名古屋市教育委員会 編集発行、1964年
名古屋市蓬左文庫 編『尾張徇行記』第二巻 愛知県郷土資料刊行会 発行、1976年復刻
* 「市内河川・ため池・名古屋港の水質の変遷」名古屋市環境局地域環境対策部地域環境対策課、名古屋市環境局地域環境対策部環境科学調査センター、名古屋市緑政土木局河川部河川計画課、2016年3月

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