市川染五郎

市川染五郎 ― 名跡の歴史と継承

市川染五郎は、歌舞伎界における由緒ある名跡です。高麗屋を屋号とし、三つ銀杏を定紋、四つ花菱を替紋としています。近年では、松本幸四郎を襲名する前に名乗る名跡として知られています。本稿では、初代から八代目までの市川染五郎の系譜をたどり、その活躍と特徴を詳しく見ていきます。

各代の市川染五郎

初代 市川染五郎 (1737-1802): 初代瀬川菊之丞に師事し、大看板役者として活躍しました。そのキャリアは、瀬川錦次から始まり、市川武十郎を経て初代市川染五郎、さらに二代目市川高麗蔵、四代目松本幸四郎、男女川京十郎と続きます。

二代目 市川染五郎 (? - 1828): 詳細な生年は不明ですが、市川染蔵を経て二代目市川染五郎を襲名後、坂東太郎助を名乗りました。

三代目 市川染五郎 (1778 - ?): 生没年については不明な部分が残りますが、市川萬蔵から三代目市川染五郎を襲名し、後に松本武十郎を名乗ったと伝わっています。

四代目 市川染五郎 (1870-1949): 舞踊の二代目藤間勘右衛門の養子であり、実父は伊勢四日市の武家でした。特に『勧進帳』の弁慶役は絶品と評され、生涯に約1600回も演じたと言われています。十一代目市川團十郎、八代目松本幸四郎、二代目尾上松緑の実父でもあります。市川金太郎から四代目市川染五郎を襲名し、八代目市川高麗蔵、七代目松本幸四郎と名乗りました。

五代目 市川染五郎 (1910-1982): 四代目の次男として生まれました。子役時代はなく、松竹から東宝へ一門を率いて移籍するなど、型破りな経歴を持ちます。歌舞伎にとどまらず、シェイクスピアの戯曲にも挑戦するなど、歌舞伎と近代演劇の垣根を越えた活躍で知られています。二代目松本純蔵から五代目市川染五郎を襲名し、八代目松本幸四郎、初代松本白鸚（隠居名）を名乗りました。

六代目 市川染五郎 (1942-): 五代目の長男です。歌舞伎のみならず、ブロードウェイミュージカルにも英語で主演するなど、その才能は多岐に渡ります。二代目松本金太郎を経て六代目市川染五郎を襲名し、九代目松本幸四郎、二代目松本白鸚（隠居名）を名乗りました。

七代目 市川染五郎 (1973-): 六代目の長男です。二枚目、実悪、色悪、女方と幅広い役柄をこなす実力派俳優として知られ、翻訳劇やテレビドラマにも出演しています。2018年1月には十代目松本幸四郎を襲名しました。三代目松本金太郎から七代目市川染五郎を経て、十代目松本幸四郎となりました。

八代目 市川染五郎 (2005-): 七代目の息子であり、当代です。2018年1月に襲名しました。四代目松本金太郎から八代目市川染五郎を襲名しました。

市川染五郎と歌舞伎

市川染五郎の名跡は、各代がそれぞれ異なる個性と才能を発揮しながら、歌舞伎の歴史と伝統を継承し、発展させてきました。伝統的な歌舞伎の枠にとらわれず、近代演劇への挑戦や海外での活動など、常に新しい試みにも挑戦することで、歌舞伎の未来を拓いてきたと言えるでしょう。それぞれの染五郎が築き上げてきた功績は、現代歌舞伎に大きな影響を与え続けています。そして、八代目市川染五郎の今後の活躍にも期待が集まっています。

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