平野龍一

平野 龍一（ひらの りゅういち）

平野龍一は、1920年9月29日に熊本県熊本市で生まれ、2004年7月16日に東京都文京区で83年の生涯を閉じた日本の著名な法学者です。刑事法を専門とし、東京大学名誉教授、元東京大学総長などの職を歴任しました。彼はまた、日本学士院の会員であり、勲一等瑞宝章を受章し、文化功労者としても称えられました。

人物背景

平野の父親は政界で活躍した人物であり、彼自身は内閣総理大臣の清浦奎吾に触発され、刑事法の研究に取り組むようになりました。教えを受けた小野清一郎の影響を受けて、後にアメリカにも留学し、刑事法の分野で深い知識を培いました。平野は自身の著作において、日本の裁判所の機能について厳しい批判を行い、1954年に設立された青年法律家協会の発起人ともなりました。

学説と業績

刑法学の研究

平野の刑法学は、哲学的かつ抽象的な観点を取り入れ、形式的な法違反だけでなく、その行為の背後にある社会的背景および道義的責任を考察することに注力しました。彼は、刑法が社会統制の手段であるという視点から、他の法律との関連性を探ることに努めました。

特に、刑罰論においては犯罪抑止を目的とした抑止刑論を展開し、犯罪論においては新旧の派閥の対立を超えて実質的な問題解決を目指しました。また、彼が提唱した「体系的思考から問題的思考への転換」は、刑法の実践において実際的な見地を提供する役割を果たしました。

1956年から始まった刑法の全面改正作業においては、平野は既存の道義的観念を批判し、改正の試みが国家的責任主義の危険を孕んでいると警鐘を鳴らしました。

刑事訴訟法の考察

平野は刑事訴訟法においても大きな影響を与えました。彼は従来の職権主義に基づく考え方を批判し、当事者主義の重要性を強調しました。特に、公判における当事者主義の構造を捜査の過程にも適用すべきであると主張し、被疑者の権利擁護に寄与しました。

学歴と職歴

平野は、熊本県内の学校を卒業後、東京帝国大学法学部を卒業しました。1948年には東京大学法学部助[[教授]]、1957年には教授に昇進し、1969年からは法学部長も務めました。1981年に定年退官した後、1984年には東京大学名誉教授に、1988年には日本学士院の会員に選ばれました。

著作と翻訳

平野の著作には、刑事訴訟法や刑法をテーマにした多くの書籍があり、学問に対する彼の貢献を広く知らしめています。特に、1958年に発表された『刑事訴訟法』や、『犯罪論の諸問題』などは高く評価されており、多くの法学者に影響を与えました。また、彼は多くの外国書の翻訳を手掛け、国際的な視野を法学に持ち込みました。

結び

平野龍一の業績は、日本の刑法学の発展に多大な貢献を果たしました。彼の持論は、現代の法学においても依然として評価されており、後進の若い学者たちにもその思想は受け継がれています。

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