建築施工管理技士

建築施工管理技士：建設業界を支える国家資格

建築施工管理技士は、日本の建設業界において重要な役割を担う国家資格です。1983年（昭和58年）、建設工事に携わる技術者の技術向上を目指して創設され、国土交通省によって管轄されています。

資格の概要

建築施工管理技士は、1級と2級の2種類に大別されます。級の表記にはアラビア数字を使用します（建築士は漢数字）。建設業法に基づき、それぞれの級が、建設工事現場における主任技術者や監理技術者としての資格要件を満たします。

1級建築施工管理技士

1級は、大規模な建設工事（超高層ビル、大規模な公共施設など）を扱う現場で、主任技術者や監理技術者として活躍します。公共工事や8000万円以上の建築一式工事、または4000万円以上のその他工事では、1級建築施工管理技士の主任技術者・監理技術者の配置が義務付けられています。また、企業の経営事項審査においても高い評価を得るため、建設業界で高い地位と信頼性を持ちます。

1級建築施工管理技士と一級建築士は、建築施工管理に関して工事規模の上限がありません。しかし、両者は専門性が異なります。一級建築士は建築設計に重点を置く一方、1級建築施工管理技士は、施工計画、工程管理、品質管理、安全管理を専門とする、いわば「建築エンジニア」です。ゼネコンなどでは、設計監理のスペシャリストとして一級建築士、施工管理のスペシャリストとして1級建築施工管理技士がそれぞれ配置されることが一般的です。監理技術者として業務可能な範囲は、1級建築施工管理技士の方が広くなっています。

2級建築施工管理技士

2級は、建築、躯体、仕上げの3つの分野があり、全ての分野で資格を取得するには3回の試験合格が必要です（1級は不要）。小規模な工事の主任技術者や監理技術者として活躍します。

1級、2級ともに、法令遵守、高品質な施工、工程・安全・品質管理といった、相反する要素のバランスが求められます。近年では環境への配慮も重要視されており、3R（Reduce、Reuse、Recycle）の遵守も求められます。

資格の沿革

建築施工管理技士の資格は、建設業法の改正（昭和35年）以降、建設機械施工技士など他の施工管理技士資格に続いて、建設業界からの要望を受けて昭和58年度に創設されました。当初は研修制度も存在しましたが、安易な資格取得を防ぐため、現在は試験による取得のみとなっています。近年では、若手技術者の確保や試験制度の適正化を目的とした見直しが行われ、受験資格や試験内容、実務経験の算定方法などが変更されています。令和3年度からは、第一次検定と第二次検定に試験が再編成され、第一次検定合格者は「技士補」、両方に合格した者は「技士」の称号が与えられるようになりました。

受験資格

1級と2級ともに、必要な学歴と実務経験年数は、卒業した学校の種類や学科によって異なります。また、2級建築施工管理技士の合格者は、一定の実務経験を積むことで1級の受験資格を得ることができます。令和6年度からは、受験資格と実務経験要件が変更される予定です。特に1級では、「特定実務経験」と呼ばれる、一定規模以上の工事における監理技術者や主任技術者としての経験が求められます。

試験内容

1級と2級ともに、第一次検定と第二次検定（1級は令和2年度までは学科試験と実地試験）からなります。第一次検定はマークシート式、第二次検定は記述式が中心です。1級では、建築学、施工管理法、法規に関する幅広い知識と応用力、2級では、建築、躯体、仕上げのいずれかを選択し、それぞれの専門分野の知識が問われます。試験内容は多岐にわたり、複雑な問題が出題されるのが特徴です。近年は社会問題を反映した問題も多く出題されています。

合格率

1級の合格率は、年によって変動がありますが、近年は20％前後となっています。2級の合格率は、1級に比べて高い傾向にあります。

資格不正取得と防止対策

近年、資格の不正取得問題が社会問題となっています。国土交通省は、不正取得した資格者を配置した企業への罰則を強化するなど、対策を強化しています。

その他

建築施工管理技士は、社会保険労務士試験や建築積算士試験などの他の資格試験において、一部免除が認められる場合があります。また、マンション維持修繕技術者試験の受験資格にもなります。

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