建築物環境衛生管理技術者

建築物環境衛生管理技術者：建物の健康を守る専門家

建築物環境衛生管理技術者とは、ビルや大規模建築物の環境衛生を維持・管理する国家資格です。一般的には「ビル管」と呼ばれ、快適で安全な建物の環境を守る重要な役割を担っています。

資格の概要と必要性

この資格は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律（建築物衛生法）に基づいて制定されました。3000㎡以上の特定建築物（学校は8000㎡以上）では、この資格を持つ技術者の選任が法律で義務付けられています。超高層ビル、大規模オフィスビル、ホテル、商業施設など、多くの人が利用する大規模建築物において、専門的な知識とスキルを持った技術者が不可欠となっています。近年の大規模建築物は、その規模や機能から小都市に匹敵するほど複雑化しており、専門家の指導・管理なしでは、衛生面や安全面での維持管理は困難です。

資格取得の方法

建築物環境衛生管理技術者資格は、大きく分けて2つの方法で取得できます。

1. 国家試験: 厚生労働大臣が指定した日本建築衛生管理教育センターが実施する国家試験に合格することで取得できます。試験科目は建築物衛生行政概論、建築物の環境衛生、空気環境の調整、建築物の構造概論、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ、昆虫等の防除の7科目です。合格率は一定ではなく、毎年変動します。
2. 講習会: 日本建築衛生管理教育センターが実施する103時間の講習を受講し、所定の考査試験に合格することで取得できます。国家試験に比べて受講資格が厳しく、受講費用も高額です。

資格保有者の役割と責任

建築物環境衛生管理技術者は、特定建築物の環境衛生上の維持管理を総合的に監督する責任者です。具体的には、以下の業務を行います。

維持管理計画の立案: 年間計画や長期計画に基づき、空調設備、給排水設備、清掃、害虫駆除などの計画を策定します。
維持管理業務の実施: 計画に基づいて、施設管理、清掃、ゴミ処理、害虫駆除などの業務を監督・実施します。
測定・検査: 空気環境、水質、設備機器などの測定・検査を行い、データに基づいて評価・改善を行います。
是正措置: 問題点の発見時には、適切な是正措置を講じ、所有者や関係者へ改善案を提案します。

求められる能力と視点

この資格には、建築構造、設備、衛生管理、法律知識など、幅広い知識と能力が求められます。また、関係者とのコミュニケーション能力や、問題解決能力も重要です。常に最新の技術動向や法令改正を把握し、適切な判断を行うことが求められます。特に、環境衛生上の維持管理に関する測定や検査結果の評価、そしてその結果に基づく是正措置の提案は、この資格保有者の重要な役割です。

資格のメリット

この資格は、ビルメンテナンス業界や建築関連企業で高く評価されており、キャリアアップにも繋がります。資格手当が支給される企業も多く、就職・転職の際に有利に働くでしょう。また、職業訓練指導員の受験資格の一部免除も受けられます。

まとめ

建築物環境衛生管理技術者は、快適で安全な建築環境を維持するために不可欠な存在です。専門知識と責任感を持って、建物の健康を守り続ける重要な役割を担っています。今後、ますます大規模建築物が増加していく中で、この資格の重要性は高まっていくでしょう。

もう一度検索