弔問外交

弔問外交とは

弔問外交とは、元首や政府要人の死去に伴う葬儀に、各国の政府要人が参列する機会を利用して行われる外交活動のことです。多くの場合、各国からの弔問団を受け入れる形で行われますが、緊張関係にある国同士が弔問団の派遣・受け入れを行う場合も含まれます。

弔問外交の概要

弔問外交は、現職の元首や政府要人が死去した場合の葬儀を対象とすることが一般的です。しかし、過去には元首や行政府の長を経験した人物の死去の際にも行われています。

かつては移動に時間がかかったため、海外の葬儀に本国の政府要人が参列することは困難でした。しかし、鉄道や飛行機といった交通技術の発展により、政府首脳や高官が海外の葬儀に参列することが可能になりました。

弔問外交では、派遣される代表者の肩書きも重要な意味を持ちます。国家元首や行政府の長、君主の親族、閣僚、政府首脳経験者などが特派大使として参列することがあります。国際社会における故人の重要度が高いほど、参列する政府代表の格も高くなり、弔問外交も活発化する傾向にあります。また、死因が予期できたか否かによって、国際的な注目度や準備が異なり、政府代表の格などの対応も変化します。

普段は敵対関係にある国家同士が、国葬の場で顔を合わせ、首脳会談を行う機会となることもあります。また、現役の最高指導者が死去した場合、その葬儀は新指導部による外交の出発点として注目されます。

弔問外交の具体的事例

以下に、弔問外交として特筆される事例をいくつか紹介します。

ハロルド・ホルト（1967年）： オーストラリア首相在職中に遊泳中に失踪し、死亡宣告。告別式には、ベトナム戦争でオーストラリアと共闘していたアメリカ、南ベトナム、韓国、タイ、フィリピンの首脳が参列しました。
ヨシップ・ブロズ・チトー（1980年）： 非同盟主義を掲げたユーゴスラビアの最高指導者の葬儀には、対立関係にあったソ連のブレジネフ書記長を含む東西両陣営や非同盟諸国の首脳が参集し、119か国が代表を派遣しました。
レオニード・ブレジネフ（1982年）： ソ連共産党書記長在任中に死去。後継者であるアンドロポフの外交デビューの場となりました。その後、アンドロポフ、チェルネンコと書記長の死去が相次ぎ、葬儀が新書記長の顔見せの場となりました。
昭和天皇（1989年）： 大喪の礼には164か国の代表が参列し、チトーの葬儀を上回る規模となりました。長年対立していた中国とインドネシアの国交回復交渉の開始や、中東和平に関する首脳間の対話が行われました。
ネルソン・マンデラ（2013年）： 南アフリカ共和国元大統領の葬儀は「史上最大規模の弔問外交」と言われました。
エリザベス2世 (2022年): 168ヵ国500人以上の国家元首や高官が招待され、2,000人のゲストが参列しました。

これらの事例から、弔問外交が国際関係において重要な役割を果たしていることがわかります。葬儀という特別な場が、国家間の対話や関係改善のきっかけとなることもあるのです。

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