強迫的ホーディング

強迫的ホーディングについて

強迫的ホーディング（Compulsive Hoarding）は、生活空間に無数の物品を過剰に収集し、手放すことができない状況を指します。この行動がもたらす影響により、個人は著しい苦痛や生活上の支障を感じることがあります。ホーディング障害とも呼ばれ、日本語では「ためこみ症」と訳されるこの症状は、米国精神医学会のDSM-5において精神疾患の一つとして定義されています。

症状と影響

強迫的ホーディングの症状は多岐にわたり、健康リスクや日常生活の機能不全、経済的問題、さらに友人や家族との関係の悪化などが関連しています。例えば、収集した物品が生活空間を占領することで、調理や清掃、寝床の確保などが困難になる場合があり、これにより物理的な空間使用が制限されることがあります。最悪の場合、住居内での火災や衛生問題（害虫や感染症の発生）を引き起こすリスクさえ生じます。

また、強迫的ホーディングは成人約2〜5%に見られる疾患とされ、特に故人の世話役を担っていた家族が亡くなると、症状が悪化する傾向があります。物への執着は非常に強いため、収集家は捨てることに大きな抵抗を持ちます。アメリカのコリヤー兄弟やマリオン・ストークスといった有名な症例も、この障害の実態を示すものとして広く知られています。

診断基準

DSM-5では、強迫的ホーディングに関する診断基準が設定されています。それによると、次のような要件が満たされなければなりません。まず「物を捨てることが持続的に困難」であること、次にその困難さは「物の保存欲求に起因する」ことが必要です。さらに、所有物が生活空間を侵食し、日常活動に支障を来すことも求められます。また、他の医学的疾病や精神障害によるものではないことが求められます。

診断基準を大まかにまとめると「捨てられない」「物を過剰に入手する」「空間が雑然としている」「心理的苦痛や機能不全が生じる」という4つの要素が必要です。最近の研究によれば、強迫的ホーディングの患者の約20%がADHDの診断基準を満たすことが明らかになっており、前頭葉の機能障害が影響している可能性が高いとされています。

関連疾患とサブタイプ

強迫的ホーディングは、抑うつや不安障害、ADHD、ASDなどの精神疾患と密接に関連しています。そのほかにも、アルコール依存症やパーソナリティ障害といった様々な疾患と関連付けられています。また、ホーディングには特定のサブタイプも存在し、書物の過剰収集を指す「ビブリオマニア」や、動物の飼育が生活を脅かす「多頭飼育崩壊」、さらに無意味な電子データを蓄積する「デジタル・ホーディング」などがあります。

治療と支援

強迫的ホーディングに対する治療法には、薬物療法や認知行動療法（CBT）が用いられますが、その実績はまだ限られています。治療には、物を処分したい気持ちとその抵抗感を調和させながら進めることが重要です。典型的なアプローチは、動機づけ面接や心理教育を通じて治療意欲を高め、認知再構成法により不要な物の選別を進めるものです。

最終的には、所有物を廃棄しても恐れるような結果が生じないことを実感し、生活空間を整える手助けを行うことで、徐々に整理整頓を習慣化できるよう導いていきます。強迫的ホーディングは、単なる物の収集にとどまらず、個人の生活や健康に深刻な影響を与えるものであり、その理解と支援が求められています。

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