怪奇猫娘

怪奇猫娘

『怪奇猫娘』は、水木しげるが別名義「東真一郎」として1958年に発表した貸本漫画です。緑書房から刊行されたこの作品は、当時の貸本怪奇漫画によく見られた「親の因果が子に報いる」というテーマを、単なる恐怖ではなく、生まれながらの不幸を背負った少女の悲しみとして描いています。

概要

水木しげるは、当時兎月書房との専属契約（正式な契約ではない）があったため、他の出版社で作品を発表する際には別名義を使用していました。本作は、その一つである「東真一郎」名義で刊行されました。

当時の貸本怪奇漫画は、因果応報を恐怖として描くものが多かったのですが、『怪奇猫娘』は、少女が恐ろしい猫の顔に変貌するという恐怖よりも、その不幸な生い立ちに焦点を当てています。2008年には小学館クリエイティブから一般書籍として復刻され、『ゲゲゲの鬼太郎』の猫娘のルーツとして紹介されました。

特に、『鬼太郎夜話』に登場する寝子との共通点が多く、「私はそれをがまん出来ない」という台詞は、映画『女はそれを我慢できない』のパロディであると言われています。

あらすじ

猫取りを生業にしている男が、墓守の飼い猫を殺害したことから物語は始まります。男が家に帰ると、身重の妻が亡くなっていました。男は妻を埋葬しますが、間もなく土の中から赤ん坊が現れます。墓守は猫の祟りを警告しますが、男は赤ん坊を「みどり」と名付け育て始めます。

数年後、みどりは小学生になりますが、魚や鼠を見ると猫のように豹変してしまう体質を持っていました。周囲から「猫娘」と呼ばれるようになり、奇異な目で見られることに苦悩します。噂を聞きつけたサーカスに捕まり見世物にされてしまいます。父親に会いたい一心で逃走するみどりでしたが、警察に追われる身となり、煙突の頂上まで追い詰められ、「どうして私だけがこんなにいじめられるのでしょう」と泣き叫ぶのでした。

主な登場人物

みどり（猫娘）
怪死した母の墓から生まれた少女。猫の血を引き、魚や鼠を見ると豹変する体質に苦しんでいる。
みどりの父
かつて猫取りを生業としていた男。男手一つでみどりを育てる。
墓守の老婆
120年生きている猫「烏猫」を飼っている。みどり達に付きまとい、祟りを警告する。
東真
幽霊サーカスのスカウト。みどりを罠にかけ捕まえる。
親方
幽霊サーカスを仕切る人物。金儲けのためにみどりを見世物にする。

関連項目

猫娘 (ゲゲゲの鬼太郎))

単行本

『怪奇猫娘』（小学館クリエイティブ、2008年11月、ISBN 978-4-7780-3096-4）
『貸本漫画集(3) 怪獣ラバン他』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2013年10月、ISBN 978-4-06-377502-0）

参考文献

* 山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』YMブックス、2007年5月。ISBN 978-4-903548-08-1。

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