排卵誘発剤

排卵誘発剤：生殖補助医療を支える薬剤

排卵誘発剤は、不妊治療における重要な薬剤であり、排卵を促すことで妊娠の可能性を高める役割を担っています。具体的には、卵巣からの卵子の放出を促す作用を持つ薬剤の総称です。hMG製剤やFSH製剤などが含まれ、それぞれに特徴があります。

種類と投与方法

排卵誘発剤は、大きく分けて内服薬と注射薬があります。

内服薬: クエン酸クロミフェンが代表的な内服薬です。比較的簡便な投与方法であるため、多くの患者さんに用いられています。
注射薬: 従来は、人尿から抽出・精製されたhMG製剤やFSH製剤が主流でしたが、近年は遺伝子組み換え技術を用いて作られた組み換え型FSH製剤が広く利用されるようになっています。注射薬は、内服薬に比べてより精度の高い排卵誘発が期待できます。

注射薬の投与方法は、患者さんの状態や治療法に応じて調整されます。例えば、step down法やstep up法といった方法があり、卵巣への負担を軽減しながら効果的に排卵を促す工夫がなされています。

適応症

排卵誘発剤は、主に以下の場合に使用されます。

排卵障害: 排卵がうまく起こらない女性に対する治療において、排卵を促す目的で用いられます。
人工授精・体外受精: 人工授精や体外受精において、複数の卵子を採取するために、意図的に過排卵を誘発する目的で用いられます。より多くの卵子を得ることで、妊娠率の向上に繋がります。
男性不妊治療: FSH製剤は、乏精子症（精子の数が少ない状態）による男性不妊の治療にも用いられることがあります。

副作用

排卵誘発剤の使用に伴い、いくつかの副作用が生じる可能性があります。特に注意すべき副作用として、以下が挙げられます。

多胎妊娠: 過排卵により、複数の卵子が同時に受精し、双胎妊娠（双子）や多胎妊娠（三つ子以上）のリスクが高まります。多胎妊娠は、妊娠高血圧症候群などの合併症のリスクが高いため、注意深い管理が必要です。
* 卵巣過剰刺激症候群（OHSS）: OHSSは、過排卵により卵巣が腫れ上がり、腹水や胸水などの症状を引き起こす重篤な副作用です。血管透過性亢進により腹水や胸水が貯留し、循環不全や血栓症といった生命に関わる危険性も伴います。OHSSの症状が出現した場合は、速やかな医療機関への受診が必要です。OHSSの発症リスクを軽減するために、適切な投与方法の選択や、排卵後の経過観察が重要となります。

まとめ

排卵誘発剤は、生殖補助医療において重要な役割を果たす一方、多胎妊娠やOHSSなどのリスクも伴います。そのため、医師による適切な診断と治療計画に基づいた使用が不可欠です。患者さん自身の状況を踏まえた上で、リスクとベネフィットを十分に考慮し、治療を進めていく必要があります。

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