放射線管理区域について
放射線管理区域とは、
放射線による障害を防止するために設けられる区域であり、法令によってその範囲や管理方法が定められています。この区域は、人が不必要に
放射線を浴びることを防ぐことを目的とし、
放射線量が一定レベルを超える場所を明確に区切り、関係者以外の立ち入りを制限します。
根拠となる法令
放射線管理区域の設定には、以下の法律や規則が関わっています。
放射性同位元素等の規制に関する法律: 放射性同位元素の取り扱いに関する基本的な法律です。
放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則: 法律を具体的に運用するための規則です。
医療法及び同施行規則: 医療機関における放射線管理に関する規定です。
労働安全衛生法、電離放射線障害防止規則: 労働環境における
放射線管理に関する規定です。
人事院規則一〇―五(職員の放射線障害の防止): 国家公務員の放射線障害防止に関する規則です。
管理区域の設定基準
管理区域は、放射線の種類や量に応じて、以下の基準に基づいて設定されます。
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に基づく基準
外部
放射線による線量が、
文部科学大臣が定める線量を超えるおそれのある場所
空気中の放射性同位元素の濃度が、文部科学大臣が定める濃度を超えるおそれのある場所
放射性同位元素によって汚染された物の表面の放射性同位元素の密度が、
文部科学大臣が定める密度を超えるおそれのある場所
具体的な数値基準としては、以下のようになっています。
外部放射線: 実効線量が3ヶ月あたり1.3mSvを超える場所
空気中放射性物質: 3ヶ月間の平均
濃度が、
空気中
濃度限度の1/10を超える場所
表面汚染密度: α線を放出する物質は4Bq/cm2、それ以外は40Bq/cm2の10分の1を超える場所
外部
放射線の線量が1週間あたり1cm線量当量で300μSvを超えるか、そのおそれがある場所
空気中の放射性同位元素の濃度が1週間について法に定められた空気中濃度限度の3/10を超えるか、そのおそれがある場所
表面汚染密度が、α線を放出しない放射性同位元素の場合、4Bq/cm2を超えるか、そのおそれがある場所
医療法に基づく管理区域の実例
医療機関においては、以下のような場所が管理区域に指定されることがあります。
放射線治療室および関連施設
診療用
放射線照射装置使用室
診療用高エネルギー放射線発生装置使用室
放射性同位元素装備診療機器使用室
診療用放射性同位元素使用室
貯蔵施設
廃棄施設
労働環境においては、電離放射線障害防止規則に基づき、以下の基準で管理区域が設定されます。
外部
放射線による実効線量と
空気中の
放射性物質による実効線量の合計が、3ヶ月あたり1.3mSvを超えるおそれのある場所
放射性物質の表面密度が、別表第三に掲げる限度の1/10を超えるおそれのある場所
国家公務員においては、人事院規則に基づき、以下の基準で管理区域が設定されます。
外部
放射線による実効線量が、3ヶ月あたり1.3mSvを超えるおそれのある場所
空気中の放射性物質の濃度が、人事院の定める濃度を超えるおそれのある場所
放射性物質によって汚染される物の表面の
放射性物質の密度が、人事院の定める密度を超えるおそれのある場所
3ヶ月間の外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質の濃度の割合の和が、1を超えるおそれのある区域
管理区域における事業者の措置
管理区域を設定した事業者は、以下の措置を講じる必要があります。
関係者以外の立ち入りを制限すること
放射線測定器の装着に関する注意、放射性物質の取扱注意、事故発生時の応急措置等を掲示すること
放射線装置室や
放射性物質取扱作業室などの遮蔽を行い、1週間あたりの実効線量を1mSv以下にすること
放射線業務従事者の被ばく線量が、5年間で100mSv、1年間で50mSvを超えないように管理すること
放射線業務従事者等の外部被ばく及び内部被ばくの線量を測定すること
女性の放射線業務従事者への配慮として、妊娠の可能性のある者には3ヶ月で5mSvを超えないように管理し、妊娠中の女性にはさらに低い基準で管理すること
管理区域の設備基準
管理区域の施設については、以下のような設備基準が定められています。
使用室の画壁は、壁、天井、床、扉、窓などで区画すること
画壁等の放射線の遮蔽能力は、外側で1週間あたり1mSv以下とすること
まとめ
放射線管理区域は、放射線による健康被害を防ぐために重要な役割を果たしています。法令に基づき、適切な基準で区域を設定し、厳格に管理することで、放射線業務に関わる人々の安全を確保しています。
参考
放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則 - e-Gov法令検索
医療法施行規則 - e-Gov法令検索
電離放射線障害防止規則 - e-Gov法令検索
*
人事院規則一〇―五(職員の
放射線障害の防止) - e-Gov法令検索