文化資本

文化資本とは

文化資本（英: cultural capital、仏: le capital culturel）は、学歴や文化的素養といった金銭によらない個人的な資産を表す社会学の概念です。この言葉は、フランスの社会学者ピエール・ブルデューによって提唱され、現在では広く受け入れられています。文化資本は、経済的支援に匹敵するほど、社会階層間の流動性を高める可能性があり、注目されています。

文化資本の起源

文化資本という用語は、1973年に発表された『Cultural Reproduction and Social Reproduction』において初めて用いられました。ブルデューは、1960年代のフランスにおける学童の成績差を説明する試みを行いました。この研究は、その後多くの他の研究や理論に発展し、ブルデューの文化資本の概念は多様な視点からの検証が進められることとなります。中でも高等教育における文化資本の重要性が再評価され、さらに深く研究が行われました。

文化資本の定義

ブルデューは、資本を「社会的関係として機能するもの」と定義し、物質的・非物質的なものを問わず、特定の社会的枠組み内で価値があり希少性を持つものとしています。このような定義に基づき、文化資本は「資本として機能し、その蓄積により所有者に権力や社会的地位を与える文化的教養に類するもの」と考えられています。

文化資本の形態

ブルデューは文化資本を次の3つの形態に区分しています。
1. 客体化された形態 (Objectified state) ー 絵画や楽器、本、骨董品など、物質的な形で存在する文化財。
2. 制度化された形態 (Institutionalized state) ー 学歴や教育資格など、制度によって保証された文化資本。
3. 身体化された形態 (Embodied state) ー ハビトゥスや言語の使い方、振る舞いとして身につける文化的な特性。

こうした文化資本の理解は、企業活動や地域の活性化を考察する上でも重要です。日本においても「構造化する構造」として文化資本が注目され、さまざまな観点からの研究が行われています。

他の資本との関係

文化資本は、経済資本や社会関係資本とともに、ブルデュー社会学の基盤を成す重要な概念であり、これらの資本は相互に転換可能です。例えば、豊かな文化資本を持つ家庭に育った子どもは、教育において有利になりやすく、学業成績が向上する傾向があります。

文化資本の影響

具体的な例として、豊富な文化資本がもたらす影響として、子どもが本に囲まれた環境で育つ場合、その子どもは自然と本好きになるでしょう。また、家庭の文化資本が多ければ多いほど、学校教育とも親和的となり、学業の達成率が高まるといった現象が見られます。ブルデューは、文化資本、経済資本、社会資本の集中によって象徴資本が形成され、それが国家資本にまで繋がることを論じています。

日本における文化資本の研究

日本においても文化資本に関するさまざまな経験的・理論的研究が行われています。著名な研究者として片岡栄美が挙げられ、文化資本の効果や教育の達成過程における家族の戦略などについて多くの論文を発表しています。また、文化経済学の観点から、日本文化の構造や特徴についての研究も進められています。

このように、文化資本は複雑で多様な要素を含む概念であり、個人の社会的地位や経済活動と密接に関連していることがわかります。

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