斎王まつり

斎王まつり（さいおうまつり）は、三重県多気郡明和町で毎年６月の第１週末の土曜日と日曜日の２日間にわたって開催される歴史絵巻のような祭りです。

この祭りは、かつてこの地に存在した伊勢神宮の斎宮（さいくう）に由来します。斎宮とは、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えるため、歴代天皇の皇女や女王の中から選ばれた「斎王」が滞在した場所です。斎王まつりの最大の見どころは、この斎王が京の都から遥々伊勢の斎宮へと旅をした様子を再現する「斎王群行」です。

斎王群行では、平安時代の華やかな装束をまとったおよそ120名の参加者が、斎宮跡の史跡指定地内を進みます。具体的には、「さいくう平安の杜」を出発し、「上園芝生広場」を経て「斎宮歴史博物館」へと至る道のりを、斎王とその従者たちが雅な行列を組んで歩みます。十二単をまとった斎王が輿に乗って進む姿は、まるで平安時代にタイムスリップしたかのような感動を与えます。

斎王群行が祭りのプログラムとして始まったのは、第３回が開催された1985年のことです。現在の、より時代考証に基づいた本格的な再現形式となったのは第７回（1989年）以降のことです。祭りの盛り上がりとともに参加希望者も増え、第13回（1995年）からは町外からの群行参加者も公募されるようになりました。また、斎王役や女官役の選考方法も変化し、第18回（2000年）以降は書類選考を通過したすべての候補者の中から斎王役が選ばれる形式が採用されています。斎王群行は、滋賀県甲賀市で行われる「あいの土山斎王群行」や京都府京都市の「斎宮行列」と並び、外部からの公募が行われている「三大斎王群行」の一つとしても知られています。

近年では、2011年には当時の三重県知事が伊勢国の国司という役柄で群行に参加し、祭りを「すばらしい」と称賛しました。また、2012年からは伊勢市で毎年10月に開催される「伊勢まつり」にも斎王群行が登場しており、実際に伊勢神宮の外宮まで行列が進むという、史実（斎王が神嘗祭のために伊勢神宮へ向かったこと）とも関連性の深い取り組みも行われています。

斎王まつりは通常、以下の日程で執り行われます（雨天の場合は中止となることがあります）。

第１日（土曜日）
15:00～21:00：斎王市（地元の特産品販売などが行われる賑わい）
17:00～：前夜祭（子どもたちによる群行や、翌日の斎王群行の出演者紹介など）

第２日（日曜日）
10:00～15:00：斎王市、アトラクション（様々な催し物が開催）
13:00～：禊の儀、そして最大の見どころである斎王群行（さいくう平安の杜から斎宮歴史博物館までのルート）

祭りでは、多くの参加者が平安時代の様々な役柄に扮します。特に一般公募されている主な役柄には、雅な十二単に身を包み輿に乗る最高位の「斎王」、可愛らしい「子ども斎王」、斎王に次ぐ立場の「女別当」や「内侍」、「命婦」、「采女」、「女嬬」といった女官たち、そして「近衛使」、「検非違使」、「陪従」、「随身」といった男性の従者たちなどがいます。また、行列に彩りを添える「風流傘」を持つ者や、斎王らの輿を担ぐ「輿丁」、舞を披露する「舞人」などもおり、それぞれが当時の装束を忠実に再現し、祭り全体で壮大な平安絵巻を紡ぎ出しています。

斎王まつりは、斎宮の歴史と文化を現代に伝える貴重な機会であり、多くの人々がその雅やかな世界に触れることができる特別なイベントです。

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