十二単

十二単（じゅうにひとえ）の魅力と構成

十二単（じゅうにひとえ）は、平安時代後期に発展した公家女性の正装として知られています。この装束は、単に美しいだけでなく、その背後にある文化や歴史にも深い意味が詰まっています。一般的に「十二単」と称されているこの衣装は、元々は「女房装束」や「五衣唐衣裳」と呼ばれていましたが、時を経て酒話が変わり、現在の名前が広まりました。

十二単の名称について

「十二単」という言葉は、特に文献に見える「弥生の末の事なれば、藤がさねの十二単の御衣を召され」という表現から推測されるように、誤解から生じて広まったとの説があります。このため、実際の条文や記録では「十二単」という呼称は用いられず、宮中の正式な呼称は五衣・唐衣・裳であることがわかっています。

元来の意味としては、「単」の数は衣の枚数を意味しており、数によって「二単」「七単」と表現されていたことも興味深いです。平胤子が入水した際には「12枚の袿を重ねた姿で」と解釈されることがありますが、現代ではこのような解釈が一般になっています。実際には、十数枚重ねた袿は、平安末期には5枚程度に落ち着いていました。

重い衣装とは

十二単は、その構成から見ても相当な重量を誇ります。おおよそ20キログラムにも及ぶことがあり、温かさを必要とする四季によってまた異なる形が見られます。平安時代の気候についてもいくつかの意見が分かれていますが、一部の研究者によれば、当時の京都は現代よりも寒かったとされています。しかし、その説には異論もあり、実際には平安時代は温暖な時期であったとする研究結果も存在します。

十二単の構成

唐衣（からぎぬ）

唐衣は、装束の最上層に位置し、背子の変化した形式になっています。この部分は短い袖を持ち、その色合いは後の時代において皇后の衣装として白系統に定められるようになりました。

裳（も）

裳は、表衣の上に着用され、腰の後半身を覆います。平安時代前半では巻きスカートの形でしたが、重ね着の影響で現在の形が形成されました。

表衣（うわぎ）

裳の内側に位置し、最も内側の層として重要な役割を果たします。

打衣（うちぎぬ）

主人公的な役割を担うこの衣は、砧で打たれることにより光沢を持つ特性を持ち、表衣の下に着ることが普通でした。

袿（うちき）

この部分は、打衣の下に何枚か重ねられ、平安時代には十数枚が着用されていたこともあります。

長袴（ながばかま）

裳の形状の変化により、前の開きを隠す役割を持つこの衣は、着用者の年齢に応じて色を変えます。

単衣（ひとえ）

この最内層は、装束の下着に相当します。

かさねの美

日本の伝統的な装束では、かさね（襲ね）とも呼ばれる複数の衣を重ねる技法が不可欠でした。袿の重ね方には、季節や行事に基づく厳密なルールがあり、色の組み合わせには多くのバリエーションが存在しました。生き生きとした彩りと工夫が求められ、周囲に違和感を与えないように気を使って装うことがマナーでした。

特に、春の色目としては紅梅の赤や、秋には深い青色が好まれるなど、季節毎に選ばれた色が重ねられました。また、具体的な組み合わせは古典文学にも描写され、多くの女房たちが色の選び方や重ね方に工夫を凝らしていた姿が見受けられます。これが、平安時代の女性たちの感性と美の追求を示しています。

まとめ

このように、十二単はただの衣服ではなく、平安時代の文化や人々の感性を映し出すものといえます。その美しい構造と色の重ね方に宿る情緒は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索