斜体

斜体について

斜体とは、文字を傾けて表記する書体の形態です。通常、垂直線を右に傾けてデザインされ、「傾斜体」や「斜字体」とも呼ばれます。水平線は水平のままです。

斜体とイタリック体、オブリーク体の違い

斜体には、大きく分けてイタリック体とオブリーク体の2種類があります。しばしば混同されますが、両者は異なる概念です。

イタリック体: イタリック体は、独自の書体デザインを持ち、立体（正立した書体）とは異なる独自の形状を持っています。歴史的に、活版印刷において、独特の美しさや個性を表現するために開発されました。


オブリーク体: オブリーク体は、立体を単純に傾けただけの書体です。機械的に傾けただけなので、イタリック体のような独特の形状は持ちません。


日本語の場合、イタリック体に相当する書体は存在せず、コンピュータ上での日本語の斜体はオブリーク体となります。つまり、日本語の文字を単純に傾けたものになります。

字形と傾きの角度

一般的に、斜体は右に傾けて表記されます。左に傾けたものは「左斜体」と呼ばれます。文字の傾きは、正立した書体を0度として、右に傾ける方向を正として角度で表現します。

欧文と和文での使用例

欧文

欧文では、立体で記述された文章の中で、特定の語句を強調したり、区別したりするために斜体が使用されます。


語句の強調: 特定の単語や句を強調したい場合に用います。
書名、雑誌名、新聞名等の引用: 文献名などを引用する際に使用されます。ただし、章や節の見出しには立体が用いられるのが一般的です。
船名: 船舶の名前を表す際に使用されることがあります。
外国語: 外国語の単語やフレーズを引用する際にも使用されます。
専門用語: 専門用語を説明する際に、その用語を斜体で表記することがあります。
生物の学名: 生物学では、属名と種名を斜体で表記します。
物理量や数学の変数: 物理量や数学の変数を表す記号を斜体で表記することがあります。
Webページアドレス: ウェブページのアドレスを表記する際にも使用されることがあります。


文章全体が斜体で表記されている場合、その中でさらに強調したい語句は立体で表記するといったルールもあります。

和文

和文では、欧文と比べて斜体の使用頻度は低いです。写真植字の登場やワープロソフトの普及により、斜体が容易に利用できるようになったものの、和文で斜体を使用する文化的背景は薄く、使用法も定まっていません。


広告などデザイン的な要素を重視する場面では使用されることがありますが、学術論文などでは、ほとんど使用されません。

マイクロソフト製OSにおける日本語斜体

Windows Vista以降のマイクロソフト製OSに標準搭載されているメイリオフォントでは、日本語文字の斜体が用意されていません。そのため、文章全体をイタリックにしても、日本語の部分は斜体になりません。

日本語の斜体書体

写植時代には、日本語の斜体書体も存在しました。例えば、写研の電算写植システム用として開発された「スーシャ」（細明朝体の斜体）や「ゴーシャ」（ゴシック体の斜体）などが知られています。モリサワの電算写植システム用書体にも、斜体フォントが存在しました。

まとめ

斜体は、文字を傾けて表記する書体であり、欧文では強調や区別のために広く使用されています。一方、和文では使用頻度が低く、使用法も定まっていないのが現状です。しかし、デザインの要素として、あるいは特定の表現を強調する目的で用いられることもあります。それぞれの言語や文脈に応じて、適切な使用方法を理解することが重要です。

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