旅立ちの日に

『旅立ちの日に』の誕生とその影響

『旅立ちの日に』は、1991年に埼玉県秩父市立影森中学校で制作された合唱曲です。当時の校長であった小嶋登氏と、音楽科教諭の坂本浩美氏の協力のもと、この曲は誕生しました。小嶋校長は中学校を「歌声の響く学校」に変えることを目指し、合唱の機会を増やしていく中、坂本氏は「卒業する生徒たちのために特別なものを残したい」との思いから、この曲の制作を企画したのです。

最初は生徒たちは合唱に対して抵抗を感じていましたが、坂本氏の熱意により徐々にその雰囲気は変わり、学校内で歌う楽しさが生まれていきました。音楽は人々の心を一つにする力があることを、校長と教諭は実感しながら活動を続けました。合唱曲『旅立ちの日に』の歌詞は、小嶋校長が「私はそのセンスがないから」と躊躇する中、翌日には彼の思いが込められた歌詞が坂本氏のデスクに届けられました。この言葉を得て、坂本氏は感動し、新たな旋律が頭に浮かび、楽曲はわずか15分で完成しました。

曲完成後、影森中学校の「3年生を送る会」で教職員から卒業生に向けてサプライズとして披露されました。小嶋氏は41年にわたる教師生活をこのイベントで締めくくり、その後『旅立ちの日に』は一度きりの特別なものであるはずが、翌年から生徒たち自身が歌い継ぐことになります。これは、歌声が学校の雰囲気を変え、子供たちに深い感動を与えた結果と言えるでしょう。

全国的な認知度の向上

『旅立ちの日に』は、最初は秩父市立影森中学校でのみ歌われていましたが、やがて近隣の学校でも広がっていきました。音楽教諭で作曲家の松井孝夫氏がこの曲に注目し、混声三部合唱への編曲を行ったことがきっかけとなり、全国に広まるきっかけとなりました。また、1998年頃には音楽之友社の雑誌『教育音楽』で取り上げられ、多くの小中学校で歌われるようになりました。

さらに、テレビやCMでの紹介を通じて、特に2007年にはSMAPがNTT東日本のCM曲として使用され、その普及が加速しました。『旅立ちの日に』は、さらに卒業式での定番曲となり、他の卒業ソングを抜き去り、日本全国で最も歌われる合唱曲となりました。

プロの歌手による発表

この曲は多くのプロの歌手にも取り上げられています。例えば、芹洋子が2005年にシングルとしてリリースし、フォーク・デュオのトワ・エ・モワやredballoonもそれぞれの楽曲の中に収録しました。また、さくら学院が2012年にシングルを発売し、YouTubeでのミュージック・ビデオも公開され、若い世代にも親しまれています。

地域での記憶と記念

影森中学校の校内には、『旅立ちの日に』の歌碑が建立され、地域でも大切にされています。秩父ミューズパークには、この曲をテーマにした「旅立ちの丘」があり、そこでのコーラスも地元の魅力となっています。また、卒業シーズンには曲のオルゴールバージョンが防災放送で流されるなど、地域の中での親しみが続いています。

2016年には、西武鉄道の秩父駅の発車メロディーとしても採用され、駅を訪れる人々にこの曲が流れることで、さらにその知名度が高まりました。

まとめ

『旅立ちの日に』は、ただの合唱曲にとどまらず、世代を超えて多くの人々に感動を与える作品となりました。その背景には、教育者たちの熱意や思いが込められています。今後も、この曲が卒業生たちの心に残り続けることでしょう。

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