日南町

鳥取県日南町：自然と歴史が織りなす、創造的過疎への挑戦

鳥取県南西部の内陸に位置する日南町は、1959年（昭和34年）に近隣の村が合併して誕生しました。町名は、日野郡の南部に位置することに由来しています。一級河川である日野川の源流域にあたり、周囲を山々に囲まれた、自然豊かな地域です。

豊かな自然と歴史

日南町は、孝霊天皇の伝承や、古来より行われてきたたたら製鉄など、歴史と文化に彩られた町でもあります。豊かな自然環境は、農業や林業といった地域産業の基盤を支え、良質の米やトマト、木材の生産が盛んです。また、美しい星空は、町全体の保全地域に指定されているほどです。

特に、米作りは町の基幹産業の一つであり、湧き水と昼夜の寒暖差を生かした栽培によって、良質なコシヒカリが生産されています。その品質は高く評価されており、全国大会での受賞歴もあるほか、有名レストランやホテルでも使用されています。トマト栽培も盛んで、標高の高いハウスで育てられたトマトは、甘味と酸味のバランスが絶妙と評判です。

林業においては、江戸時代から大正時代にかけてはたたら製鉄用の木炭供給地として栄え、その後は生活用木炭の生産が盛んに行われていました。戦後はスギやヒノキの人工林が広がり、木材の加工・販売拠点も整備されています。町では林業後継者の育成にも力を入れており、全国初の町立林業アカデミーを開校しています。

歴史と文化

昭和の文豪、井上靖や松本清張ともゆかりのある日南町には、多くの史跡や観光地が存在します。近代化産業遺産に指定されている若松鉱山跡や、戦国時代から江戸時代初期にかけて山陰地方で流通していた伯州銀山跡などが、町の歴史を物語っています。また、生山城や亀尾山城といった城跡も残されており、歴史好きにはたまらない場所です。

井上靖は、太平洋戦争末期に家族で日南町福栄に疎開し、その時の経験は彼の作品にも影響を与えました。彼の作品にインスピレーションを与えた「野分の館」という記念館も存在します。松本清張は、父方の出身地である矢戸に何度も訪れ、その風景は彼の作品に描かれています。文学碑も建立され、現在もそのゆかりの地として大切にされています。

地理とアクセス

日南町は、7つの大地区と32の小地区から構成されています。それぞれの地区には特徴的な地形や集落があり、変化に富んだ景観を形成しています。

交通面では、JR伯備線が町内を通っており、生山駅が中心的な駅となっています。バス路線も整備されていますが、山間部であるため、移動には時間を要する場合もあります。主要な道路は国道180号、国道183号、そして複数の県道が通っています。

人口減少と創造的過疎への挑戦

近年、日南町は若年層の流出や出生数減少による人口減少に悩まされています。日本創成会議による「消滅可能性都市」にも選定されましたが、町では「ひとづくり」と「持続可能なまちづくり」を推進し、創造的過疎を目指した積極的な取り組みを進めています。

町長選挙は近年、無投票当選が続いており、地域住民の合意形成が進んでいると言えるでしょう。鳥取銀行の支店閉鎖問題への対応では、迅速な行動で地域経済の安定に尽力する姿勢も見せています。

まとめ

日南町は、豊かな自然と歴史、そして挑戦的な取り組みが共存する魅力的な町です。人口減少という課題を抱えながらも、創造的過疎を目指し、独自の道を歩み続けています。その取り組みは、他の地方自治体にとっても参考になるものと言えるでしょう。

もう一度検索