孝霊天皇

第7代天皇 孝霊天皇：謎に包まれた古代日本の君主

孝霊天皇は、日本の第7代天皇（在位：孝霊天皇元年1月12日 - 孝霊天皇76年2月8日）です。『日本書紀』では「大日本根子彦太瓊天皇」と記されています。しかし、孝霊天皇は「欠史八代」の一人で、その実在性については現在でも議論が続いています。欠史八代とは、第2代綏靖天皇から第9代開化天皇までの8代の天皇で、歴史的記録が極めて少ないため、その存在や治世について多くの謎が残されている天皇たちを指します。

孝霊天皇の生涯

孝霊天皇は、孝安天皇の皇子です。母は皇后の押媛（忍鹿比売）で、天足彦国押人命の娘にあたります。『古事記』には同母兄として大吉備諸進命の名前も記されています。26歳で皇太子に立てられ、父帝の崩御後、黒田廬戸宮に都を遷しました。この宮は、それまでの宮とは異なり、大和盆地の中央に位置しています。

孝霊天皇は即位後2年目に磯城県主（または十市県主）大目の娘である細媛命を皇后に迎え、後の孝元天皇となる彦国牽尊をもうけました。他にも複数の妃と子をもうけ、その中には、後の崇神天皇の時代に四道将軍となった彦五十狭芹彦命や、疫病や反乱鎮圧に貢献した倭迹迹日百襲姫命も含まれています。孝霊天皇の在位期間は76年に及び、崩御時の年齢は『日本書紀』によると128歳、『古事記』によると106歳とされています。

孝霊天皇の名と系譜

孝霊天皇の名は、『日本書紀』では「大日本根子彦太瓊天皇」、 『古事記』では「大倭根子日子賦斗邇命」と記されています。漢風諡号である「孝霊」は、8世紀後半に淡海三船によって贈られたとされています。

孝霊天皇の系譜は、皇后・細媛命との間に生まれた孝元天皇を始め、複数の妃との間に多くの皇子皇女がいました。その中には、吉備地方の平定に関わったとされる皇子も含まれています。しかし、これらの系譜についても、その正確性や裏付けとなる証拠が不足しているため、多くの疑問が残されています。

孝霊天皇の事績と伝承

『日本書紀』と『古事記』には、孝霊天皇の事績はほとんど記されておらず、系譜の記述が中心となっています。そのため、孝霊天皇は欠史八代に数えられ、その実在性や治世に関する情報は限られています。しかし、いくつかの伝承や神社の記録には、孝霊天皇に関する様々な逸話が伝えられています。例えば、鬼退治の伝説、徐福来日伝説、富士山噴火伝説、そして孝霊天皇の皇子に関する様々な伝承などです。

これらの伝承は歴史的事実とは異なる可能性も高く、その信憑性を検証することは困難です。しかし、それらの伝承は、古代の人々が孝霊天皇という人物像をどのように想像し、語り継いできたかを示す貴重な資料となっています。

陵墓と宮

孝霊天皇陵は、片丘馬坂陵とされ、奈良県北葛城郡王寺町に治定されています。宮は黒田廬戸宮で、現在の奈良県磯城郡田原本町黒田周辺と推定されています。

孝霊天皇に関する様々な説

孝霊天皇の実在性については、複数の説が提唱されています。中には、孝霊天皇の治世の長さが不自然であることや、宮・陵の所在地が前期古墳分布と一致しないことなどを根拠に、創作された天皇であると主張する説もあります。一方、宮号に関する原典の存在や、系譜に見られる磯城県主や十市県主との関わりなどを根拠に、実在した天皇であるとする説もあります。

また、孝霊天皇の名についても、後世に付加された美称や神名の一部である可能性などが指摘されています。

まとめ

孝霊天皇は、歴史的事実と伝説が複雑に絡み合った謎多き古代日本の君主です。その実在性、系譜、事績、伝承など、多くの点で未解明な部分が多く残されています。今後の研究により、新たな史料や解釈が得られ、孝霊天皇像がより明確になることが期待されます。しかし、その過程で歴史と伝承の境界線を慎重に判断していくことが重要です。

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