日暮熟睡男

日暮 熟睡男（ひぐらし ねるお）は、漫画家・秋本治氏による人気漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』および、それを原作としたアニメやテレビドラマに登場するユニークなキャラクターです。彼は葛飾警察署に勤務する警察官ですが、最大の特徴は原則として4年に一度、夏季オリンピックが開催される年にしか目覚めないという点にあります。この特異な性質から、「オリンピック男」や「オリンピックキャラクター」とも呼ばれ、長期連載を象徴する存在として読者に認識されています。

人物概要

日暮は新葛飾署の警察官で、特に超能力課に所属しています。かつては主人公の両津勘吉と同じ亀有公園前派出所に勤務していましたが、登場回数の少なさから新葛飾署へ異動したという背景があります。誕生日は2月29日と、これもまた珍しい日付です。公称の身長は165cm、体重は48kgとされていますが、これは4年間の睡眠中に痩せるためで、本来はかなりの肥満体型です。年齢は32歳から35歳前後とされており、両津の回想によれば、モスクワオリンピックの頃は5歳だったと語られています。

彼の登場頻度の低さは、再登場時に両津や大原が改めて説明を加える必要が生じるほどで、これが本作の長い歴史を物語る要素となっています。原作での初登場は1980年のモスクワオリンピックの年。以降、夏季オリンピックイヤーを中心に登場を重ね、2024年のパリ五輪の年まで計15回（番外編除く）登場しています。初期の一人称は「オレ」で、両津を苗字で呼ぶなどフランクな印象でしたが、後の登場回では一人称が「ボク」に変わり、間延びした口調で「両さん」と呼ぶようになっています。

日暮のキャラクターは、連載4周年を迎えた際に一度きりのつもりで生み出されました。しかし、長期連載となったことと読者の要望により、4年に一度の登場という形で定着しました。編集者も「4年に1回しか登場しないキャラクターは『こち亀』にしかできない」とその独自性を認めています。署内のアンケートでは「結婚したい男性ランキング」で第8位にランクインするなど、意外な人気も博しています。

能力と特技

日暮は多彩な超能力を持つ警察官です。最も特筆すべきは、24時間以内の未来を100％予知する能力で、その光景をポラロイド写真に念写することができます。この能力のおかげで、寝ている期間があるにも関わらず、未解決事件の解決や将来起こりうる事件の阻止に貢献し、解雇されずに済んでいます。ただし、寝起き直後は能力が不安定になり、過去の出来事を予知したり、ありえない光景を念写したりすることがあります。また、能力を酷使しすぎると眠れなくなる場合もあります。

未来予知の他にも、1986年の登場以降は念力を習得。1996年の登場では、泳ぐことが好きなことから驚異的な水泳の才能を開花させ、潜水泳法で日本未公認新記録を樹立し、スポーツ新聞で話題となりました。飛込競技でも才能を見せています。2004年以降はテレポーテーション能力も身につけましたが、当初は移動距離が5m程度でした。その他、透視能力や、弟との決闘以降は物体を破壊するエネルギー弾を発射する能力も使用しています。

容姿・性格・生活

日暮の起き抜けの姿は、無造作に伸びた髪に無精髭、痩せこけた体で、目元は常に垂れ下がっており覇気がありません。対照的に、警察官になったばかりの頃は丸顔の肥満体でした。

性格は極めてものぐさで、新人時代から出勤日数が少なく、勤務中も平気で眠るほどでした。その後、睡眠時間は次第に長くなり、最終的には4年に一度の出勤という状態に至ります。生活習慣も独特で、風呂を「洗濯」と称して服を着たまま洗濯機に入ったり、食器も一緒に洗ったりします。制服は着替えの面倒を避けるためつなぎ式で、着替えには両津の手助けが必要でした。夏季オリンピックに合わせて目覚めるため、持っている制服は夏服が多いようです。

オリンピックイヤー以外に無理やり起こされると極端に機嫌が悪くなり、超能力を暴走させて街を破壊するなど凶暴化します。初期には大原に対して皮肉を言うなど毒舌な一面もありました。また、寝ている間の出来事を知らないため、両津に騙されやすく、一時期は疑り深くなったこともあります。物忘れも激しく、自動車の運転方法を忘れて事故を起こしたり、目覚めるたびに自分が住む階を間違えて転げ落ちたりします。

一方で女性には弱く、女性警官の前では態度が変わり、流暢に話し、怒りも鎮めやすくなります。ホストとして働いた経験もあり、その際は持ち前のトーク力と超能力で人気を博しました。

住居は両津と同じニコニコ寮の404号室です。彼の部屋は4年間閉め切られているため、存在を知らない者には物置と思われています。部屋の内部はゴミだらけで廃墟同然となっており、回を重ねるごとに巨大な食虫植物や昆虫が異常発生し、中には日暮が捕食されそうになる描写もありました。扉が錆びついて開けにくく、両津はガスバーナーなどで破壊して入室することもしばしばです。一度改装された後は綺麗な部屋になった描写もあります。

食事に関してはかなりの雑食で、缶詰や古くなった牛乳なども口にします。初登場時は部屋でキャベツを育てていました。4年間の眠りに入る前には、大量の食事を摂って脂肪を蓄え、髭や髪を剃るなど、クマの冬眠に似た「儀式」を行います。これは4年間活動しないための栄養補給であり、日暮の体質が可能にしているようです。

4年前の知識で目覚めるため、社会の変化についていけない描写が多くのエピソードで見られます。キャンディーズのコンサートに行こうとしたり、漫才ブームや歴代首相を知らなかったり、消費税を知らずにパニックになったりしました。しかし、稀に睡眠学習で寝ている間の出来事を熟知している描写もありました。給料は寝ている間も支払われており、貯金が貯まっていますが、両津に預けた貯金を馬券で全て失われたこともあります。

近年の動向と関連情報

2004年の就寝後、超能力が胡散臭いという理由で本庁に解雇され、2008年の起床時には無職となっていました。その後、給料なしの条件で復職しました。

2012年のロンドンオリンピックでは、両津たちが仕掛けた偽のオリンピックに騙されて目覚め、後にそれが嘘だと知って激怒し、逮捕される騒動を起こしました。釈放後、宇宙飛行士を目指してイギリスで学び、資格を取得。2016年にはNASAの宇宙ステーションに滞在し、宇宙空間での能力強化により火星や金星へのワープが可能となっていました。

2020年は東京オリンピックの年でしたが、新型コロナウイルスによる延期のため、両津は日暮に「今は2019年だ」と嘘をつき、1年遅れで起こしました。この間、日暮は自宅でNetflixなどを視聴しており、ネット事情に詳しくなっていました。翌2021年、改めて「今は2020年だ」と起こされましたが、進化しすぎたテレポーテーション能力でタイムワープを起こし、1964年の東京オリンピック開会式当日に移動してしまいました。

2024年はパリ五輪の年ですが、東京五輪の延期で目覚める周期が3年となったためか、本編では最後まで眠ったまま登場しました。しかし、2025年にはオリンピックのない年にコラボ読み切りで目覚めて登場するなど、予測不能な動きも見せています。

日暮には弟の日暮起男（おきお）がいます。起男は兄とは対照的に働き続け、超企業戦士として活躍する一方、兄と同様に超能力も使えます。彼は読者アイデアから生まれたキャラクターであり、その設定は本編とは切り離されています。

アニメ版では、比較的早い段階から登場し、原作よりも頻繁にオリンピックと関係なく目覚めるエピソードが描かれました。テレビドラマ版では宮藤官九郎氏が演じ、超能力に加え霊能者的な活躍も見せました。

オリンピック延期による登場時期のずれや、2024年の登場を巡るファンの間での話題など、その特異なキャラクター性から、日暮熟睡男は『こち亀』ファンの間で常に注目の的となっています。

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