星田啓三

星田啓三七段：波乱万丈の棋士人生

1917年、大阪市に生まれた星田啓三七段は、将棋界において特筆すべき経歴を持つ棋士でした。坂田三吉という名将を師事し、棋士人生は順位戦での浮き沈み、そして劇的な復活劇を織りなす、まさに波乱万丈の一言に尽きます。

順位戦での苦闘と栄光

星田七段の順位戦生活は、まさにジェットコースターのようなものでした。初期は順調にクラスを上げていましたが、その後はC級1組、B級2組へと昇格と降級を繰り返し、やがては当時「予備クラス」（現在の三段リーグに相当）というどん底まで転落を経験します。この予備クラス在籍期間は1959年前期まで続き、その間、関西での優勝を果たすなど、地道な努力を続けたのです。

しかし、星田七段は決して諦めませんでした。1959年前期、予備クラスで関西優勝を果たし、東西決戦に進出。惜しくも敗れはしましたが、翌1959年後期には再び関西で優勝。そして今度こそ東西決戦を制し、1961年度順位戦C級2組への復帰を果たしました。これは、C級2組から予備クラスに陥落後、再びC級2組へ復帰した初めての事例として、将棋史にその名を刻むこととなりました。

54歳を迎えた1971年度、第21期王将戦では一次予選、そして二次予選で塚田正夫九段、加藤一二三九段という当時を代表する強豪を破る金星を挙げ、挑戦者決定リーグ進出という快挙を成し遂げました。リーグ戦では1勝6敗と苦杯を舐める結果に終わりましたが、その1勝は当時棋聖であった中原誠を相手に挙げたものであり、その実力の一端を示すものとなりました。

「C3」制度の適用者として

第28期順位戦ではC級2組で降級点3回となり、規定により引退が決まりました。しかし、直前に順位戦以外の棋戦での対局が認められる「C3」制度が制定され、星田七段はこの制度の最初の適用者2名の一人となりました。これは、彼の長年の棋界への貢献を称えるかのような、ドラマチックな幕切れでした。

その他の功績

星田七段の昇段は、1944年四段、1947年六段（順位戦C級上位による特進）、1973年七段（表彰感謝の日表彰による贈七段）、1993年八段（将棋の日表彰による贈八段）と、長く棋界に貢献した証と言えるでしょう。 これらの昇段の背景には、順位戦における活躍はもちろんのこと、人柄や棋界への貢献度なども考慮されていたと推察されます。1986年に引退、1996年に死去されました。

まとめ

星田啓三七段の棋士人生は、順位戦での苦悩と栄光、そして「C3」制度適用という、ドラマチックな展開に満ち溢れていました。 三段リーグからの復活劇、50代での王将戦挑戦者決定リーグ進出など、年齢を重ねてもなお、将棋への情熱を燃やし続けた彼の姿は、後世の棋士たちにとって大きな勇気と希望を与え続けることでしょう。彼の功績は、単なる棋士としての成績にとどまらず、将棋界の発展に貢献した、重要な歴史の一部として記憶に刻まれるべきです。

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