更改

更改（こうかい）とは

更改とは、当事者間の契約によって、既存の債務を解消し、それとは異なる内容の新たな債務を発生させる行為を指します。民法第513条に規定されています。

更改の概要

法制度上、更改は債権譲渡や債務引受が認められていなかった時代には重要な役割を果たしていました。しかし、これらの制度が整備された現代においては、その重要性は低下しています。ドイツ民法には更改の規定はありませんが、日本の民法はフランス民法に倣い、規定を設けています。しかし、日本においても更改が実際に利用されるケースは多くありません。

日常用語では、プロ野球選手の契約更新を「契約更改」と呼ぶことがありますが、これは民法上の更改とは異なります。

他の債務処理との比較

更改は、債権譲渡、代物弁済、準消費貸借と区別されます。

債権譲渡

債権者の交替による更改と債権譲渡は、債権者が変わる点で共通しています。また、債務者の交替による更改と免責的債務引受は、債務者が変わる点で共通しています。さらに、目的の変更による更改は、債権の目的が変更される点で変更契約と似ています。しかし、更改では新旧の債権に同一性がないのに対し、債権譲渡などでは債権の同一性が維持される点が異なります。

代物弁済

代物弁済は、弁済とは異なる債務消滅原因であり、債権者が何らかの対価を得る点は更改と共通しています。しかし、代物弁済では新たな債権は発生しないのに対し、更改では新たな債権が発生するという点で異なります。

準消費貸借

準消費貸借は、金銭などの給付義務を負う者が、その物を消費貸借の目的とすることを約することによって成立します。これは、新たな債権が発生するという点で更改と似ていますが、更改とは区別されます。

更改の種類

民法改正（2020年4月施行）により、更改の種類は以下の3つに具体化されました。

1. 給付内容の重要な変更による更改：従来の給付内容を大きく変更する場合（513条1号）。
2. 債務者の交替による更改：従来の債務者が第三者に変わる場合（513条2号）。
3. 債権者の交替による更改：従来の債権者が第三者に変わる場合（513条3号）。

過去には、手形の発行や条件付債務の変更も更改とみなされることがありましたが、法改正によってこれらは除外されました。

給付内容の重要な変更による更改

これは、従来の給付内容を大きく変更する更改です。

債務者の交替による更改

債務者が第三者に変わる更改です。債権者と新たな債務者との契約によって成立します。改正前は、債務者の意思に反する交替は認められませんでしたが、改正後は債務者の意思に関わらず交替が可能になりました。また、改正後の債務者は、旧債務者に対して求償権を持ちません。

債権者の交替による更改

債権者が第三者に変わる更改です。旧債権者、新債権者、債務者の三者間の契約によって成立します。債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によって行わなければ、第三者に対抗できません。

更改の効果

旧債務の消滅と新債務の成立

更改によって、古い債務は消滅し、それとは同一性のない新たな債務が成立します。旧債務が存在しない場合、更改契約は無効となります。

改正前は、新債務が不法な原因以外で成立しなかった場合でも旧債務は消滅するとされていましたが、改正後は個別の事例ごとに判断されることになりました。

また、旧債務に存在した抗弁権は、新債務には引き継がれません。

担保の移転

原則として、旧債務のための人的担保や物的担保はすべて消滅します。ただし、質権や抵当権については、債権者が単独で、旧債務の範囲内で新たな債務に移すことが可能です。ただし、第三者が設定した質権や抵当権を移転するには、その第三者の承諾が必要です。

担保の移転は、更改の相手方に意思表示をすることで行います。

連帯債務における更改

更改は、連帯債務の絶対的効力事由の一つです。連帯債務者の一人と債権者の間で更改が行われた場合、原則として、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します。ただし、この規定は任意規定であり、当事者間の特約によって相対的効力とすることも可能です。

連帯債務における更改は、債権の消滅を容易にし、債権の効力を弱めるため、連帯債務の本来の趣旨に反するという批判もあります。

まとめ

更改は、古い債務を解消し、新たな債務を生み出す契約です。債務者や債権者の変更、給付内容の変更など、さまざまな形態があります。法改正によって、その内容はより明確化されましたが、実務で利用されるケースは限定的です。債務整理を検討する際には、更改だけでなく、他の方法も合わせて検討することが重要です。

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