月光荘

月光荘の歴史と魅力

月光荘（げっこうそう）は、1917年に東京で創業した日本の画材店です。店舗は豊多摩郡淀橋町角筈（現在の新宿区）に位置し、建物の設計は著名な画家・藤田嗣治によって行われました。もともとは、フランスやイギリスからの輸入画材を取り扱う商業からスタートしましたが、時代と共に独自の製品を展開していくことになります。

あゆみ

1940年、月光荘は疎開先の富山県宇奈月で、コバルトブルーを用いた技法を開発し、国産の絵の具の第一号を制作しました。この革新は、自社工場での生産を開始するきっかけとなり、同店は自社製品に注力していきます。

しかし、太平洋戦争の影響で新宿の店舗が焼失し、1948年には銀座の小さな店舗での再スタートを余儀なくされました。その後、1952年には猪熊弦一郎の要望に応じて、チタン製の油絵の具「チタン・ホワイト」を製造することに成功しました。これは、画材メーカーとしての地位を確立する重要な一歩となりました。

1960年代に入ると、月光荘はさらに独自の製品開発に注力します。特に月光荘ピンクと呼ばれるコバルト・バイオレット・ピンクの開発は、画材界への影響を与えました。このようにして、質の高いオリジナル絵の具を提供する画材店として名を馳せることになります。

1970年代には画廊事業を開始し、ソビエト絵画を多く取り扱ったことでも知られています。しかし、1980年代後半には不正輸入に関与したとしてスキャンダルが発覚し、1989年には一度倒産に至ります。画材事業は創業者の兵藏とその娘の日比ななせによって再建され、画材の信頼を取り戻しました。

再生と発展

その後、2006年に銀座8丁目へ店舗を移転し、再びアートの舞台としての存在感を高めました。2008年には月光荘スケッチブックの「ウス点」がグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞し、松下幸之助の依頼で制作されたことが多くの注目を集めました。

年間を通じて様々な活動を通じて絵画やアートに対する深い愛情を示し続ける月光荘は、2013年には「月光荘サロン・月のはなれ」をオープンし、さらに2014年にはアルミパレットが再びグッドデザイン賞を受賞するなど、その地位を不動のものとしています。

2017年には創業100周年を記念して「人生で大切なことは月光荘おじさんから学んだ」という書籍を出版し、2021年にはユーモアカードの詩や色ポエムをまとめた「エノグ屋の言葉集」を発表しました。同年には、埼玉の工場を改装し、カフェバーとアトリエ、宿泊スペースが併設された複合施設「月光荘ファルベ」としてリニューアルオープンしました。

2023年には、「Maison Gekkoso メゾンゲッコウソウ」と名付けられた大人の社交場を店舗地下に設け、アートを楽しみながらの交流の場として新たな驚きと魅力を提供しています。

店名の由来

店舗名「月光荘」は、歌人の与謝野鉄幹と与謝野晶子の夫妻が、創業者の橋本兵藏を大切に思い、ポール・ヴェルレーヌの詩を引用して名付けたもので、深い愛情が込められています。このように、月光荘はただの画材店ではなく、アートを志すすべての人々のための場所として、今後もさらなる進化を遂げていくことでしょう。

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