服部嵐雪

服部嵐雪：芭蕉門下の巨星、その生涯と俳句

服部嵐雪（はっとり らんせつ）は、承応3年（1654年）に生まれ、宝永4年（1707年）に没した江戸時代前期の俳諧師です。松尾芭蕉の高弟の一人であり、「雪門」の祖として知られています。

生い立ちと初期

嵐雪は、淡路出身の武士の家に生まれました。幼少の頃は、かなりの不良青年で、遊里や芝居町に出入りしていたようです。延宝2年（1673年）または3年（1674年）頃、松尾芭蕉に入門し、蕉門の古参の一人となりました。

俳諧師としての活躍

延宝6年（1678年）に句集に初めて句が収録され、俳諧師としての活動を始めました。貞享5年（1688年）には句集『若水』を刊行し、宗匠として独立。元禄3年（1690年）には『其帒（そのふくろ）』を刊行し、俳名声を高めました。

芭蕉との関係

嵐雪は、芭蕉から才能を高く評価されていました。しかし、芭蕉の奥州行脚の際に送別の句を贈らなかったなど、師弟関係には軋轢も生じていたようです。元禄7年（1694年）に芭蕉が亡くなると、嵐雪は追悼句会を開き、その死を悼みました。

作風と評価

嵐雪の作風は、柔和で温雅であることが特徴です。写実的な表現の中に、温かみのある感情が込められています。芭蕉は嵐雪の才能を高く評価し、宝井其角と並ぶ存在として認めました。

芭蕉没後の活動

芭蕉没後は、其角と共に江戸俳壇を代表する存在となりました。門弟を育成し、「雪門」として一派を形成。中興期以降の俳壇に大きな影響を与えました。

代表的な句

うまず女の雛かしづくぞ哀なる
蜑の子にたうとがらせん道明寺
よろこぶを見よやはつねの玉箒
羽子板やたゞに目出度裏表
ほつほつと食摘あらす夫婦かな
霜朝の嵐やつゝむ生姜味噌
ふとん着て寝たる姿や東山
星合や瞽女も願の糸とらん

辞世の句

一葉散る咄ひとはちる風の上

死とその後

宝永4年（1707年）に54歳で亡くなりました。墓所は駒込の常験寺、後に雑司ヶ谷の本教寺に移されました。門人たちによって追善集『風の上』が編纂され、その功績が偲ばれています。

服部嵐雪は、芭蕉の精神を受け継ぎながらも、独自の温雅な作風を確立し、江戸俳壇に大きな足跡を残しました。彼の俳句は、今もなお多くの人々に愛されています。

主な著作

『若水』
『其帒』
『枕屏風』
『遠のく』
『萩の露』
* 『曠野』

これらの句集には、嵐雪の繊細な感性と自然への深い洞察が込められた作品が数多く収録されています。

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