宝井其角

宝井其角 （たからい きかく）

宝井其角は、江戸時代前期に活躍した俳諧師で、1661年に生まれ、1707年に没しました。本名は竹下侃憲。彼はその芸名の他にも、「螺舎」「狂雷堂」「晋子」「宝晋斎」といった多くの別号を持ち、彼の作品は広く知られています。

彼の生まれは江戸堀江町で、近江国膳所藩の医師の家に育ちました。当初は母方の姓である榎下を名乗っていましたが、後に自身の名を宝井に改めました。彼に関する記録には、榎本という表記が存在しますが、これは誤りとされています。

延宝初年の1673年、彼は著名な俳人である松尾芭蕉に弟子入りし、その後、延宝7年に発行された「坂東太郎」には、彼の短歌が3首登載されました。この時期以降、彼の名は多くの作品に寄稿されるようになり、特に天和3年に発行された「虚栗」では漢詩的なスタイルの流行に貢献しました。貞享3年に宗匠となり、翌年には「続虚栗」を出版し、彼の影響力はさらに高まりました。

宝井其角は、彼の作風として「洒落風」を確立し、酒を好み、派手でありながらも親しみやすい口調の作品を生み出しました。元禄7年、彼は芭蕉の死を悼み追善集「枯尾花」を刊行し、宗匠としての地位をさらに強固なものにしました。

彼の死後、彼のスタイルや影響を受けた流派は水間沾徳によって引き継がれ、彼の弟子たちは江戸の俳諧界で「江戸座」という組織を結成しました。また、彼が用いた署名の点印は、その後の俳人たちによって受け継がれ、彼の影響は長く続くことになります。

彼の生涯には多くの逸話が残されています。例えば、ある会合で書家の佐々木文山が場をしらけさせる言葉を書いた際、其角がその場を和ませる言葉を付け加えたという話があります。また、彼は画家や歌舞伎役者など多くの著名人と交流し、さらに西鶴とも親交を持っていました。

私生活において彼は酒好きで、創作においても自由な発想が垣間見えます。忠臣蔵の伝説においては、大高忠雄との対話を描いた創作もあり、これは後世の物語にも影響を与えています。しかし、史実とは異なるフィクションも含まれており、当時の名士たちとの関係は文学の中での創作となります。

その後、彼の墓所は1963年に改葬され、2015年には彼の名を冠した俳句大会が始まりました。其角の業績は、現代にも影響を与えており、俳句文化の重要な一部を形成しています。彼の作品には「虚栗」や「続虚栗」などが含まれ、今日でも多くの人に愛されています。彼の作風の特性は、単なる形式を超え、感性や深淵な洞察を伴った作品であることが評価され続けています。

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