朝宮茶

朝宮茶：日本五大銘茶の一つ、歴史と伝統を誇る近江の銘茶

滋賀県甲賀市信楽町朝宮地区で生産される朝宮茶は、宇治茶、川根茶、本山茶、狭山茶と並ぶ日本五大銘茶の一つとして名高い、由緒ある日本茶です。山間地の厳しい自然環境の中で育まれた朝宮茶は、独特の香りと奥深い味わいを持ち、緑茶の中でも最高峰と称される逸品です。

歴史：最澄と深いつながり、800年以上の歴史

朝宮茶の歴史は古く、今から1200年以上前に遡ります。平安時代の高僧、最澄が唐から持ち帰った茶の種を、信楽町の朝宮にある岩谷山に植えたのが始まりと伝えられています。815年には朝廷への献上も行われ、古くからその品質の高さが認められてきました。

室町時代の文明年間（1469年～1487年）には、信楽荘の代官と土豪が領主の近衛家に朝宮茶を献上した記録が残っており、この地における茶栽培の盛況が伺えます。江戸時代には、松尾芭蕉が朝宮を訪れ、「木隠れて 茶摘みも聞くや ほととぎす」という句を残しています。この句碑は現在も残っており、歴史を感じさせてくれます。

幕末の開港後は、茶が国内で生糸に次ぐ重要な輸出品となり、朝宮茶も盛んに生産、輸出されました。1880年刊の『滋賀県物産誌』には、土山地域に次ぐ生産量を誇っていたことが記されています。近世においても、朝宮茶は地域経済を支える重要な作物であったことが分かります。

21世紀の現代においては、朝宮茶の抹茶が、カステラ、ロールケーキ、プリン、アイスクリームなどの様々なスイーツにも利用され、その風味は幅広い世代に愛されています。

特徴：山間地の気候が育む、独特の香り、深い味わい

朝宮茶は、寒暖差の激しい山間地で栽培されています。この厳しい環境が、朝宮茶独特の豊かな香りと奥深い滋味を生み出しています。

朝宮茶の茶葉は、他の茶葉に比べて、より多くの栄養素を含んでいると考えられており、健康にも良いお茶として知られています。

広報活動：甲賀市の「おもてなし条例」

朝宮茶の生産地である甲賀市では、地元産のお茶を信楽焼の器で振る舞う習慣を広めるため、2015年3月5日に「甲賀市甲賀の茶及び甲賀の地酒を信楽焼の器でもてなす条例（通称：おもてなし条例）」が可決されました。この条例は、朝宮茶をはじめとする甲賀市の特産品をより多くの人に知ってもらうための積極的な取り組みの一つです。

まとめ：歴史と自然が育んだ、至福の味わい

朝宮茶は、800年以上の歴史と、山間地の厳しい自然環境が育んだ、独特の風味を持つ日本茶です。その歴史、伝統、そして深い味わいは、多くの人々を魅了し続けています。これからも、朝宮茶が日本の茶文化を代表する銘茶として、その地位を確固たるものにしていくことでしょう。

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