狭山茶

狭山茶とは

狭山茶は、埼玉県西部と東京都西多摩地域を中心に生産されている日本茶です。埼玉県内では最大の農産物生産面積を誇り、入間市がその中心的な生産地となっています。その他、所沢市や狭山市、近隣の飯能市などでも生産されています。東京都内では、瑞穂町や青梅市などで生産されるお茶は「東京狭山茶」として区別されることもあります。

歴史と概要

狭山茶の歴史は古く、鎌倉時代にまで遡ると言われています。静岡茶、宇治茶と並び、日本三大茶の一つに数えられています。古くから「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」という言葉が伝えられており、その味わいは高く評価されてきました。

狭山茶は、大規模な茶産地としては北限に位置しており、冬には雪や霜が降りることもある冷涼な気候で育ちます。この寒さが、茶葉を厚く、芽が重なるように成長させる要因となっています。江戸時代には、川越藩領であったことから「河越茶」と呼ばれていました。武蔵野の新田開発によって栽培が普及し、産地も拡大しました。

茶葉の摘み取りは年に2回行われ、一番[[茶]]は4月から5月、二番[[茶]]は6月から7月に出荷されます。主な栽培品種は「やぶきた」と「さやまかおり」です。

狭山茶の主産地が入間市である理由は、かつて入間市と狭山市の名称が入れ替わる可能性があったことに由来します。狭山丘陵は入間市から所沢市にかけて広がっており、狭山市は含まれていません。そのため、入間市と狭山市の間には地名の混乱がしばしば見られます。

製法

狭山茶の美味しさの秘訣は、丁寧に選別された厚みのある茶葉と、「狭山火入れ」と呼ばれる伝統的な焙煎方法にあります。この火入れによって、狭山茶特有の濃厚な甘味が引き出されます。手揉み茶の製法は、「茶葉を蒸して焙烙に和紙を敷き、揉み乾かす」というもので、これは江戸時代に考案された伝統的な技術です。現在では、主に手もみ狭山茶保存会によって、その技術が保存されています。

特徴

狭山茶は、寒冷な気候で育つため、茶葉が厚く、重厚な香味とコクを持つのが特徴です。一方、温暖な地域で育つ茶葉は薄く、さっぱりとした味わいになります。狭山茶は、露地栽培がほとんどで、被覆栽培は少ないです。伝統の狭山火入れによって、色、香り、味ともに重厚で、少ない茶葉でもしっかりとした味がでるように仕上げられています。

現状

狭山茶の生産地は、都市化が最も進んだ茶産地です。1960年代から、東京のベッドタウンとして人口が急増し、住宅や商業施設が増える一方で茶園は減少しました。生産量は、他の主要産地に比べると少ないですが、これは寒冷な気候のため収穫量が少ないことや、都市近郊で土地価格が高いことなどが要因です。しかし、都市化によって地元需要が増え、近郊農業として確立しています。また、地域団体商標にも登録されています。

希少性

寒冷地で育つ狭山茶は生産量が少なく、都市近郊であることも相まって、希少性が高いです。しかし、近年ではオンラインショッピングでも購入できるようになりました。狭山茶は、「自園自製自販」という形態の個人経営のお茶屋が多く、それぞれのお茶屋がこだわりを持って製茶しているため、同じ狭山茶でも味わいが異なります。

特に、入間市の若手茶師は、品評会で高い評価を受けており、狭山茶は「日本三大茶」の名に恥じない、全国でも指折りの茶産地と言えます。

新たな展開

近年では、埼玉県内の他の地域でも生産されるようになり、ペットボトル入りの狭山茶も販売されています。また、自治体や事業者によって、狭山茶のブランド化が進められており、新商品の開発やPR活動が行われています。東京都内では、地元の狭山茶を使った紅茶「東京紅茶」の販売も開始され、地場産業の活性化に繋がっています。

地元茶業協会による狭山茶の定義

一般社団法人埼玉県茶業協会によると、狭山茶の産地は、埼玉県内及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域（主に狭山丘陵地域）とされています。また、埼玉県内の特定の地域名を産地とすることができます。表示基準としては、埼玉県内産及び埼玉県に隣接する東京都の西部地域産の荒茶を100%使用したもの、または50%以上100%未満使用した「狭山茶ブレンド」と定められています。

農業協同組合

狭山茶の生産者は、他の農産物とは別に狭山茶のみを専門に取り扱う農協を組織しています。

狭山茶業農業協同組合：埼玉県内の狭山茶生産地域を管内とする
東京狭山茶農業協同組合：東京都内の狭山茶生産地域を管内とする

その他

狭山茶に関する史跡や施設としては、以下のものがあります。

中院：狭山茶発祥の地とされる場所
入間市博物館：狭山茶をテーマにした博物館
狭山稲荷山公園：埼玉県主催茶会「さやま大茶会」の会場

狭山茶は、地域文化とも深く関わっており、

東村山音頭に歌われたり、
テレビドラマの舞台になったり、
ファッションデザイナーや詩人にも愛されています。

また、狭山茶のPRを行う「狭山グリーンティースタッフ」や、プロ野球の試合会場で販売されるなど、地域に根ざした活動も行われています。

アニメーション映画「となりのトトロ」にも登場するなど、その存在は広く知られています。

埼玉県応援非公認キャラクター「にゃーちゃ」も狭山茶をモチーフにしています。

狭山茶は、その独特の風味と歴史、地域とのつながりによって、多くの人々に愛され続けているお茶です。

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