木下龍也

木下龍也は、1988年1月12日に山口県周南市で生まれた歌人です。もともとコピーライターを志望していましたが、穂村弘の歌集に触れたことをきっかけに、2011年から本格的に短歌の創作を始めました。彼の作品は、日常の些細な出来事や感情を繊細な言葉で捉え、読者の心に深く響くことで知られています。

キャリアの始まりと飛躍

木下龍也の短歌は、雑誌『ダ・ヴィンチ』の短歌投稿コーナーで穂村弘に選ばれたことをきっかけに、新聞やラジオなど様々なメディアで紹介されるようになりました。2012年には現代歌人協会主催の全国短歌大会で大会賞を受賞し、その才能が広く認められるようになりました。

2013年には、書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」から第一歌集『つむじ風、ここにあります』を出版。この歌集は、彼の独特な感性と表現力が凝縮された作品として、多くの読者から支持を集めました。その後も、『きみを嫌いな奴はクズだよ』や『あなたのための短歌集』など、精力的に歌集を発表し、現代短歌の世界で確固たる地位を築いてきました。

2018年には、舞城王太郎、岡野大嗣との共著『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』を出版。短歌の書籍としては異例の1万部を発行し、短歌の可能性を広げました。

短歌の個人売買と社会貢献

木下龍也は、2017年から依頼者への短歌の個人売買「あなたのための短歌一首」を行っています。この企画は、依頼者の個人的なエピソードや感情を基に、世界でたった一つの短歌を創作するというものです。

2021年には、この企画を書籍化した『あなたのための短歌集』をナナロク社から出版しました。この書籍では、木下龍也は印税を受け取らず、その収益をナナロク社が書店から買い戻し、希望する学校や図書館に寄贈するという独自の取り組みを実施しています。この活動は、短歌をより多くの人に届けるだけでなく、社会貢献にもつながる新しい試みとして注目されています。

活躍の場を広げる

木下龍也は、短歌の創作活動だけでなく、テレビやラジオなど様々なメディアにも出演し、短歌の魅力を広めています。NHKの『首都圏情報 ネタドリ!』や『文字メンタリー -あなたにしみこむ31音-』、毎日放送の『情熱大陸』などに出演し、その個性的な人柄と短歌に対する情熱が多くの視聴者を魅了しました。また、ラジオ番組『文芸選評』にも複数回出演し、短歌の奥深さを伝えています。

2023年7月には、長年の活動が評価され、令和5年度山口県芸術文化振興奨励賞を受賞しました。

著作一覧

歌集

つむじ風、ここにあります（2013年5月25日、書肆侃侃房）
きみを嫌いな奴はクズだよ（2016年4月29日、書肆侃侃房）
あなたのための短歌集（2021年11月11日、ナナロク社）
オールアラウンドユー(2022年10月7日、ナナロク社)

教本

天才による凡人のための短歌教室（2020年11月14日、ナナロク社）
すごい短歌部（2024年11月、講談社）

共著

玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ（岡野大嗣、舞城王太郎共著、2017年12月19日、ナナロク社）
今日は誰にも愛されたかった（谷川俊太郎、岡野大嗣共著、2019年12月19日、ナナロク社）
* 荻窪メリーゴーランド（鈴木晴香共著、2023年8月29日、太田出版）

周囲からの評価

声優の河野ひよりが、木下龍也の第一歌集『つむじ風、ここにあります』を愛読書として挙げています。また、ライターのダ・ヴィンチ・恐山は、Webラジオでの木下龍也の投稿を「自由律詩でずば抜けて面白いものを毎回送ってきてくれた」と評しています。

木下龍也は、短歌という短い形式の中に、人間の心の機微や感情を巧みに表現し、読者に深い感動を与え続けています。彼の作品は、短歌の世界だけでなく、文学全体においても重要な存在として、今後も注目されていくでしょう。

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