桑原水菜

桑原水菜は、千葉県を出身地とする日本の小説家です。中央大学文学部史学科で学んだ後、執筆活動を開始しました。1989年下期に開催された第14回ノベル大賞において、投稿作品『風駆ける日』が見事にコバルト読者大賞を受賞。この受賞作が翌1990年2月号の雑誌『Cobalt』に掲載され、作家としての第一歩を踏み出しました。

主に集英社のコバルト文庫から多くの作品を発表しており、特に『炎の蜃気楼（ミラージュ）』シリーズは彼女の代表作として広く知られています。このシリーズは本編全40巻に加えて番外編が刊行されており、累計発行部数は600万部を超える驚異的な人気を博しました。その人気から、多数のイメージアルバムやCDドラマが制作されたほか、漫画化やアニメ化も実現しています。シリーズの挿絵は初期を東城和実氏が、後期を浜田翔子氏が担当しました。なお、『炎の蜃気楼』シリーズの物語の前日譚にあたるのが「邂逅編」です。

他にも、戦国時代を舞台にした女忍者の活躍を描く『風雲縛魔伝』（全7巻、挿絵：桑原祐子）、演劇界を舞台に才能と愛憎が渦巻く人間ドラマを描いた『赤の神紋』（全14巻＋番外編2巻、挿絵：藤井咲耶）など、様々なジャンルのシリーズを発表しています。『赤の神紋』はドラマCDとしても制作されています。

サスペンスファンタジーの要素を持つ『シュバルツ・ヘルツ』（全14巻＋番外編3巻、挿絵：夢花李＆中村龍徳）では、心臓移植を受けた主人公が謎の人物たちに追われる物語が描かれます。

また、『イルゲネス』シリーズは、遺伝子操作によるクローン売買が行われる島を舞台にしたSF作品で、マッグガーデンノベルスから刊行されました（挿絵：黒乃奈々絵）。この小説を元に、石据カチル氏の作画による漫画版『イルゲネス〜黒耀の軌跡〜』と、その続編で桑原氏自身が書き下ろしシナリオを手がけた『イルゲネス〜偽翼の交響曲〜』が『月刊コミックアヴァルス』で連載されています。

『西原無量のレリック・ファイル』は、天才的な若き遺物発掘師が遭遇する事件の謎を追う物語で、角川書店から刊行されました。後に角川文庫に収録される際、『遺跡発掘師は笑わない』という副題が付けられ、4巻以降は文庫版のための書き下ろしとなっています。こちらも睦月ムンク氏の作画で漫画化されています。

小説以外にも、読者大賞受賞作品集に収録された『風駆ける日』、ビーボーイノベルズやf-Clan文庫、集英社文庫、講談社文庫、角川書店など、様々なレーベルから単発の小説を発表しています。

さらに、多岐にわたる活動を展開しており、多武峰洸という別名義を用いて漫画原作も手がけています。よしゆき氏作画の『焔の柩』などがその例です。エッセイ集『炎の蜃気楼紀行』や、インタビュー記事が掲載された書籍、挿絵担当者との共著によるイラスト集もあります。特に音楽分野では、自身の作品である『炎の蜃気楼』関連のイメージアルバムや、声優・速水奨氏のオリジナルアルバムに作詞家として歌詞を提供しており、その楽曲の一部はカラオケとしても配信されています。

このように、桑原水菜は小説執筆を中心にしながらも、漫画原作、エッセイ、作詞など、幅広い分野で才能を発揮し続けている作家です。その作品はドラマCDや漫画、アニメ、音楽など多様なメディア展開がされており、多くの読者やファンを魅了しています。

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