榎本一夫

榎本一夫：ゲーム史に刻まれたデザイナーと、ジャンプ放送局の風雲児

榎本一夫氏（1953年生まれ）は、日本のゲーム業界において独特の存在感を放つ人物です。デザイナーとして数々の有名ゲームタイトルに関わり、特に『ドラゴンクエスト』のロゴデザインで広く知られています。しかし彼の活動は、ゲームデザインだけにとどまりません。集英社の漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』の人気コーナー「ジャンプ放送局」における活躍も、彼の魅力を語る上で欠かせません。

ジャンプ放送局での活躍と、貧乏神のモデル

埼玉県さいたま市出身の榎本氏は、浦和市立高等学校、駒澤大学法学部を卒業後、デザインの道を歩み始めます。その独特のキャラクター性から、「ジャンプ放送局」では常に人気者であり、同時に格好のネタの的でもありました。大きな頭、少ない名前の画数といった容姿や、貧乏キャラとしての定着ぶりは、番組内で多くの笑いを生み出しました。

特に有名なのは、「桃太郎電鉄」シリーズに登場する貧乏神（ボンビー）のデザインモデルとなったことです。開発者のさくまあきら氏によれば、榎本氏の貧乏性（自称）がモデルとなったとのこと。番組での貧乏ネタ、倒産ネタ、そして恐妻家ネタを織り交ぜた彼のキャラクターは、土居孝幸氏の手によって見事に貧乏神というキャラクターに昇華されました。

榎本氏自身も、ハドソンのTVCMに貧乏神として出演するなど、積極的にこのキャラクターと関わり、シリーズの一部として深く関わっています。ボンビーの独特の口調「○○○なのねん」も、ジャンプ放送局での榎本氏の言い回しを参考に作られたと言われています。

「えのんを探せ！」など、数々の企画に参加

「ジャンプ放送局」では、榎本氏をフィーチャーした独自コーナー「えのんを探せ！」も存在しました。これは『ウォーリーをさがせ！』を彷彿とさせる企画でしたが、探すこと自体よりも、ユーモラスなシチュエーションやインパクトのあるビジュアルが重視されていました。このコーナーからも、榎本氏のキャラクター性の強さが伺えます。

また、彼は食道楽としても知られ、『ジャンプ放送局』では、ペヤングソースやきそばをこよなく愛するあまり、独自に考案した「ペヤング算」を披露するなど、多様な才能を見せていました。

ゲームデザインと、その他の活動

榎本氏のデザイナーとしての仕事は、『ドラゴンクエスト』のロゴデザインに留まりません。数々のゲームタイトルのロゴデザインや、キャラクターデザインなどを手がけてきました。しかし、ロゴデザインに関しては印税は得られなかったとのことです。

『ドラゴンクエスト』のロゴデザインは、当時ロールプレイングゲームの概念を理解していなかった榎本氏が、映画館の70mmプリント上映マークを参考にデザインしたことが有名です。このデザインはシリーズを通して踏襲されています。

さらに、さくまあきら氏らとの親交を通して、『聖竜伝説モンビット』や『虹のシルクロード』といったゲームの開発にも関わっています。また、俳優としての経験もあり、山口百恵主演のドラマなどに出演した経歴も持ちます。こうした多様な経験が、彼の仕事にも独特のスパイスを加えていると言えるでしょう。

バナナグローブスタジオと、その後

榎本氏は有限会社バナナグローブスタジオを設立し、代表取締役社長を務めていました。2020年には代表取締役社長から取締役会長に、2022年には会長職を退任しています。長年に渡り、ゲーム業界、そしてエンターテイメント業界に貢献してきた氏の功績は、計り知れません。

結論：ゲーム業界とエンターテイメント界に大きな足跡を残した人物

榎本一夫氏は、デザイナー、ゲーム開発者、そしてバラエティ番組のレギュラーとして、多様な顔を持つ人物です。『ドラゴンクエスト』のロゴデザイン、『桃太郎電鉄』シリーズでの貧乏神との関わり、そして「ジャンプ放送局」での活躍は、ゲーム史、そしてエンターテイメント史に、彼独特のユーモアと才能を残しました。彼の活動は、これからも多くの人の記憶に刻まれ続けるでしょう。

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