横浜水族館

横浜水族館について

横浜水族館は、昭和初期に横浜市で開館した水族館です。その歴史は短く、わずか数年で閉館しましたが、当時の水族館事情をうかがい知る上で貴重な存在と言えるでしょう。

開館の経緯

水族館の設立は、大連商工会議所議員であり水族館運営に詳しかった平田包定氏の提唱がきっかけでした。1928年（昭和3年）に東京で開催された大礼記念博覧会に併設されていた水族館を、横浜市に移設することを提案したのです。この提案に横浜市と水産会（現在の漁連）が賛同し、建設場所の選定に入りました。候補地として、元町、磯子、杉田があがりましたが、最終的に磯子区の臨海部の市電用埋立地、現在の磯子警察署の裏手に決定しました。

建設費用は、平田氏が資材と1万円を、水産会が1万5千円を負担しました。当時の公務員上級者の初任給が75円であったことを考えると、かなりの投資だったと言えるでしょう。

開館と運営

1928年（昭和3年）8月11日、横浜水族館は開館を迎えました。開館日には花火大会が重なったこともあり、周辺の海水浴客を含めて18万人もの人々が訪れ、大変な賑わいを見せました。しかし、当時の技術水準では、施設の維持が難しく、営業期間は5月から9月までと限られており、冬季は閉館せざるを得ませんでした。

当時の資料によると、館内には海水と淡水の水槽が設置され、数百種類の海や川の魚が飼育されていたようです。1929年度（昭和4年度）の決算では、入場者数は5,200人、入場料は大人20銭、子ども10銭でしたが、経費が4,880円と赤字経営でした。集客のために、活動写真の上映や珍しい動物の展示などの経営努力を重ねましたが、経営状況は改善せず、1930年（昭和5年）秋に閉館となりました。短い歴史ではありましたが、その存在は、当時の人々の娯楽に対する関心の高さを表していると言えるでしょう。

同時代の水族館

同時代の水族館として、上野恩賜公園内に1882年（明治15年）に小規模な観魚室が、1929年（昭和4年）に水族室が開設されています。これらの施設と比較すると、横浜水族館は規模は小さかったものの、地域の人々にとっては貴重な娯楽施設であったと考えられます。

まとめ

横浜水族館は、昭和初期に短期間だけ存在した水族館であり、その歴史は長くはありません。しかし、当時の社会情勢や人々の娯楽に対する関心を知る上で、重要な歴史的資料と言えるでしょう。


参考文献
* 『磯子の水辺から－堀割川その復権－』 2001年、堀割川の会編

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