横田空域

横田空域：日本の空に存在する米軍管制空域の現状と課題

横田空域は、東京都を含む1都9県に広がる、高度約3,700～7,000mの空域です。正式名称は横田進入管制区で、横田飛行場（米空軍横田基地）への航空機の進入を管理する区域として設定されています。現在も在日米軍が管制業務を行っており、日本の航空管制において特異な存在となっています。

安全確保のための進入管制区

多くの航空機が発着する空港には、安全な運航を確保するために進入管制区が設けられます。日本には約30の進入管制区があり、その管轄は国土交通省、防衛省、そして米軍と分かれています。横田空域はその中でも米軍が管轄する2か所のうちの1つです。横田基地だけでなく、厚木基地、入間基地など周辺の飛行場、さらには空域を通過する航空機全てに対して、米軍が航空管制を行っています。そのため、横田空域を飛行する航空機は、原則として米軍の指示に従う必要があります。これは日本の他の空域では国土交通省や自衛隊の指示を受けるのとは対照的です。

歴史と段階的返還

米軍による横田空域の管制は、日本占領時代から始まり、1975年の日米合同委員会合意によって継続されることとなりました。その後、羽田空港拡張などの影響で、1992年と2008年に空域の一部が返還されています。2007年には、航空自衛隊の管制官が米軍の管制施設に併設されるようになり、2019年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた羽田空港の発着経路見直しにおいても、新たなルートの一部が横田空域を通過するケースが認められるなど、段階的な変化が見られます。しかしながら、この返還は部分的なものであり、空域の全面返還を求める声は現在も根強く残っています。

民間機の飛行と影響

誤解されがちですが、横田空域は米軍の排他的使用が認められた区域ではなく、飛行禁止区域でもありません。有視界飛行方式の航空機は許可なく飛行可能です。例えば、報道ヘリコプターやグライダーなどが横田空域内を飛行する事例もあります。一方、計器飛行方式の航空機は、他の空域と同様に事前の許可が必要です。現在でも、羽田空港発着便の一部や、調布飛行場発着の島嶼部路線などが横田空域を通過しています。しかしながら、米軍との協議が必要なため、民間航空機の運航経路設定には制約があり、これまで日本の航空会社は運航効率の低下を訴えてきました。

運航への影響と政治的動き

横田空域は、民間航空機の運航に影響を与えてきました。従来、羽田発着便は東京湾上空を飛行して横田空域を避けていたケースが多々ありました。そのため、定期航空協会は、2006年に横田空域の早期返還を政府に要望しています。政府も、空域の削減が必要との認識を示し、東京都も全面返還を働きかけています。その後、空域の一部返還や、航空自衛隊の管制官併設などが行われましたが、完全な返還には至っていません。千葉県などは、羽田空港への着陸機が県上空を飛行することについて、横田空域の存在を理由に挙げています。元航空管制官の指摘によれば、羽田空港発着便の一部で、現在でも課題が残っている部分も存在します。

空域内での訓練と返還問題

横田空域は訓練空域ではありませんが、米軍による訓練飛行が行われたとの報道もあります。日本政府は繰り返し空域の返還を求めており、東京都は軍民共用化と合わせて全面返還を主張しています。一方、各政党も、独自の立場から返還や管制権の在り方について議論を続けています。

返還に伴う新たな課題

空域返還によって、羽田空港の発着経路設定の自由度が高まる一方、新たな騒音問題が懸念されています。横田空域の下に位置する地域の上空に新たな飛行ルートが設定される可能性があり、周辺自治体からは、騒音対策やルート見直しを求める声が出ています。

まとめ

横田空域は、日本の航空交通管制に大きな影響を与えてきた空域です。その歴史、現状、そして今後の課題を理解することは、日本の安全で効率的な航空輸送システムを構築するために重要です。今後の返還交渉の行方、そして周辺地域住民との調和が、今後の焦点となるでしょう。

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