正家

三原正家（みはらまさいえ）

概要

三原正家は、14世紀前半から文和2年（1353年）ごろに活動した備後国三原の刀工で、備後三原派の祖または中興の祖です。彼の名は、刀の名跡として長い歴史を有し、初めは下作と見なされていましたが、応仁の乱以降、その刀剣の優れた斬れ味から名声を高めました。正家の名跡は、16世紀末まで続き、300年以上にわたって日本刀史にその名を残しました。15世紀前半にあたる四代正家は、最上大業物に位置づけられる名工とされ、初代も大業物、三代も良業物として評価されています。

長い間、日本では備州の刀として著名なのは備前国の古備前派や備前派でしたが、三原派（古三原派）はその知名度が低く、地位や価値も低く見られていました。しかし、時代が進むにつれて、実戦での使用が多くなり、三原派の刀が持つ優れた斬れ味が評価されるようになり、ついには名刀の仲間入りを果たしました。江戸時代には、幕府の公式試斬者による評価により、初代の右衛門尉、大業物として評価される辺りから、四代左兵衛尉も最上大業物に称されるようになりました。正家は日本刀史において非常に名高い存在であり、特に「正」という字を持つ刀工として、村正や正宗に次ぐ知名度を誇りました。初期の正家が名乗る「三原正家」は、150年後の名乗りであるため、初代から三原の刀工であった証拠は不明で、他地域で活動していた可能性も示唆されています。

作風

三原正家の造る刀は、体形が鎬高で、棟の重ねは薄い特徴があります。また、地鉄は細やかな杢目肌で、ウズラ杢や三原肌と称される美しい模様を持っています。刃文は直刃が多く、鋩子は小丸で、これらの特徴からも、彼の刀が高く評価される理由がうかがえます。

主な作品

特に有名な作品の一つが「幽斎大三原」です。この刀は細川幽斎の愛刀で、大磨上状態の無銘な刃物です。厳密には正家の作かどうかは分かりませんが、三原派の名刀であることから、高い確率で正家によるものと推測されています。サイズが非常に大きく、脇差でありながらも、刃渡りがほぼ打刀に相当する二尺近くあります。幽斎の後は、彼の嫡子である細川忠興に渡り、忠興は手放そうとしなかった伝説があり、将軍の介入によって忠利にその刀が譲られた逸話が残っています。現在、この刀は熊本県出水神社に所蔵されています。

その他

三原正家の刀は、各時代にわたり高い評価を受けながらも、実戦においてその威力が見える形で文化的遺産としての地位を確立しました。特に、初代からの流派が後の其阿彌家に続くなどと、その後も名脈が受け継がれていることが分かります。正家の名は、江戸時代から連綿と続く名工たちによって、今なお多くの刀剣愛好家や歴史研究者にとって重要な存在であり続けています。各地で評価され続ける正家の刀は、単なる武器としてだけではなく、日本文化の象徴的なアイコンとして大きく認識されています。

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