死因究明

日本における死因究明制度の歴史と現状

日本における死因究明制度は、明治時代に遡ることができます。この制度は、初めて明治維新後に制定された刑事訴訟法に基づき、主に司法解剖を通じて死因を明らかにする仕組みが整えられました。これは犯罪捜査の一環としての側面が強く、死因が不明な場合には、刑事訴訟法に基づいた手続きが適用されました。

戦後の変革と監察医制度の導入

しかし、第二次世界大戦後には、GHQの指導の下で新たに監察医制度が導入されました。この制度は、犯罪性にかかわらず、死因が明確でない場合には監察医が検案や行政解剖を行うことを定めています。具体的には、死体解剖保存法第8条に規定されています。ところが、この監察医制度は、現在でも東京23区、横浜、名古屋、大阪、神戸の5都市に限られ、地方では犯罪捜査を重視した死因究明に依然として偏りが見られます。

海外と比較すると、日本では解剖による詳細な調査が少なく、警察は異状死体として処理するケースが一般的です。このため、死因の究明が不十分な状況が続いていました。

社会的関心の高まりと制度の見直し

21世紀に入り、2007年に発生した「時津風部屋力士暴行死事件」が契機となり、死因究明制度の改善の必要性が広く認識されるようになりました。当初、この事件は病死とされましたが、後に暴行による致死事件であることが判明しました。このような事例が示す通り、犯罪による死亡が見逃されるリスクが指摘され、2009年の民主党政権成立とともに、新たな死因究明制度の構築がマニフェストに掲げられました。

実際に、民主党と国民新党の連立政権下で2012年には「死因究明等推進に関する法律」が成立し、警察が死亡の原因を調査するため、解剖が行える条件が整いました。また、歴代の国家公安委員会委員長は内閣府特命の担当大臣を兼任する形で、この制度の推進に取り組みました。

基本法の成立と新たな展開

2014年には時限立法として施行されていた法律の失効があり、新しい理念に基づく法律が求められる声が広がりました。特に、日本医師会や日本法医学会をはじめとする各団体から強い要望が寄せられました。2018年に放送されたテレビドラマ『アンナチュラル』が人気を博したことも、死因究明制度の不備を認識させるきっかけとなりました。

2019年には安倍政権下で「死因究明等推進基本法」が施行され、これにより厚生労働省に死因究明等推進本部が設置されました。この法律に伴い、死因究明に関する権限が内閣府から厚生労働省に移管されました。この新しい法律により、より多くのケースで死因の解明が行えるようになることが期待されています。

現在の課題と未来の展望

2018年の警察による異状死体の取り扱い件数は約17万体であり、病床数の削減や在宅死の増加などの影響で、2030年にはその数が約30万体に達する可能性も指摘されています。これに対応するためには、今後も継続的な制度の見直しと改善が求められます。

日本の死因究明制度は、歴史的な背景を背景にした複雑な経緯を経て、現在の制度に至っています。今後は、より正確な死因究明が行われることを目指して、制度の充実が必要です。

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