毒まんじゅう

毒まんじゅう

毒まんじゅうとは、文字通りには毒の入った饅頭を指しますが、比喩表現として用いられることの多い言葉です。一見すると魅力的に見えるものの、近づいたり関わったりすると不利益を被る可能性があるもの、あるいは相手の策略に嵌ってしまうような状況を指します。

歴史的背景

毒まんじゅうという言葉が広まった背景には、歴史的な逸話が存在します。慶長16年（1611年）に徳川家康と豊臣秀頼が二条城で会見した際、秀頼を護衛した加藤清正が会見後間もなく急死しました。この出来事から、「毒まんじゅう暗殺説」が囁かれるようになり、歌舞伎の題材にもなりました。

この説では、家康が秀頼を毒殺しようと企み、平岩親吉が毒を仕込んだ饅頭を秀頼に勧めました。しかし、清正がそれを察知し、自ら毒饅頭を食べて秀頼を守ったとされています。史実では、清正と平岩は会見後に死去していますが、清正の死は会見から約3ヶ月後、平岩の死は約9ヶ月後であり、毒の影響にしては時間差がありすぎるため、この話は俗説とされています。また、会見後2年ほどの間に、浅野幸長や池田輝政など、豊臣氏恩顧の大名が相次いで死亡したことも、毒殺説に拍車をかけました。

比喩表現としての毒まんじゅう

現代では、毒まんじゅうは以下のような意味合いで用いられます。

政界での例え: 敵対するグループへの誘いに乗り、相手の策略に嵌ることを「毒まんじゅうを食う」と表現します。
一般的な例え: 一見すると美味しそうに見えるが、飛びつくと痛い目に遭うことを指します。
将棋用語: 相手に隙を見せているように見せかけ、実は相手の悪手を誘う罠の手を意味します。

具体的な事例

毒まんじゅうという言葉が実際に使われた事例をいくつか紹介します。

2003年の橋本派: 自民党総裁選で、橋本派の村岡兼造が自派の藤井孝男ではなく小泉純一郎を支持した際、野中広務が「（村岡氏は）毒まんじゅうを食らったのではないか」と発言しました。この発言が2003年の流行語大賞を受賞しました。
2008年の菅直人: 民主党代表代行（当時）の菅直人は、麻生内閣が提案した定額給付金を「毒まんじゅう」と批判し、給付金部分を分離する予算修正案を提案しました。
同和対策事業: 同和対策事業を巡り、日本共産党が内閣同和対策審議会の答申を「毒まんじゅう」と批判し、部落解放同盟と対立しました。

その他

毒まんじゅうという名称は、ロシアンルーレット的な要素を持つ食品にも用いられることがあります。例えば、北海道室蘭市のチキウ岬（地球岬）のお土産「炎の毒まんじゅう」や、沖縄県の土産「ハブの毒まんじゅう」は、一つだけ激辛の饅頭が混ざっています。

また、仙台市の松栄堂には「どくまんじゅう」という菓子がありますが、これは独眼竜（伊達政宗）の「独」に由来するもので、毒とは関係ありません。静岡県熱海市には「熱海温泉 毒饅頭」という菓子がありますが、こちらはドクダミの「ドク」が商品名の由来となっています。

毒まんじゅうは、その言葉の持つイメージから、注意喚起や批判的な意味合いで使用されることが多い言葉です。相手の言葉や提案を鵜呑みにせず、慎重に判断することの重要性を示唆する言葉と言えるでしょう。

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