水木しげる漫画大全集

『水木しげる漫画大全集』とは

『水木しげる漫画大全集』は、漫画家・水木しげるの全漫画作品を収録した、まさに集大成と呼ぶにふさわしい個人全集です。2013年6月から2019年11月にかけて、講談社より全103巻、別巻5巻、補巻5巻、索引1巻の全114巻構成で刊行されました。監修は作家の京極夏彦氏が務めました。

本全集の最大の特徴は、水木しげるの漫画家としての軌跡を網羅的に辿れる点にあります。貸本デビュー作から最新作、未発表作品、さらには漫画に類すると判断された絵物語や画報まで、水木しげるが手がけた全ての漫画作品が収録されています。

収録内容と特徴

収録作品は、水木しげる本人の意向を尊重し、初出時の状態を可能な限り再現しています。カラー原稿はカラーで掲載され、媒体別・発表順を基本とした構成となっています。

特に注目すべきは、『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズが、水木しげる名義のものが全て収録されている点です。過去の単行本では断片的にしか収録されていなかった作品も、本全集では発表順にまとめて読むことができます。

各巻末には、各界の著名人による解説が掲載されており、作品への理解を深めることができます。また、月報「茂鐵新報」（もてつしんぽう）が封入されており、収録作品のエピソードや解説を読むことができます。

刊行スケジュールと形態

全集は、3期に分けて刊行されました。

第1期: 2013年6月～2014年9月 (全33巻)
第2期: 2015年2月～2016年6月 (全35巻)
* 第3期: 2017年1月～2018年5月 (全35巻)

各巻はA5判・並製で、ページ数は約300～600ページです。索引を除く全113巻の総ページ数は、57,000ページにも及びます。

2016年8月からは、電子版の配信も開始されています。

編集の裏側

水木しげるの作品は、発表媒体が多岐にわたり、改編も多いため、作品の全体像を把握するのが困難とされていました。過去に全集の企画が何度も立ち上がりながら実現しなかったのは、そのためです。

本全集の刊行にあたっては、準備段階から編集委員会が立ち上げられ、作品の洗い出しや編集方針などが慎重に進められました。編集作業には1年以上が費やされ、作品の網羅性と初出状態の再現に力が注がれました。

過去の単行本で改変されたページは、初出の状態に戻されています。原稿が現存しない部分は、当時の雑誌をスキャンしデジタルリマスターで復元するという徹底ぶりです。さらに、印刷所で施されていたハーフトーンも再現され、水木しげるが指定した本来の形に修復されました。

全集を巡るエピソード

全集の刊行を記念して、「バオーンの夕べ」というイベントが複数回開催され、制作秘話などが語られました。

また、過去に盗作問題が発覚した短編「太郎稲荷」が、全集に無説明で収録されたことがありました。しかし、星新一の遺族からの抗議を受け、第3刷から星新一の作品であることを明記する形で対応しています。

その他

テレビ番組『開運!なんでも鑑定団』に、編集委員会の代表として京極夏彦氏が出演し、「水木しげる肉筆の紙芝居」を探す企画がありました。

さらに、第3期刊行記念として、単行本のページをTシャツにプリントできる企画も実施されました。

水木しげるは、全集の完成を見届けることを望んでいましたが、刊行途中の2015年に亡くなられました。全集完成後には、関係者によって水木しげるの墓前に報告会が開かれました。

まとめ

『水木しげる漫画大全集』は、水木しげるの漫画家人生を余すところなく堪能できる、まさに永久保存版と言えるでしょう。水木しげるファンはもちろん、漫画研究者にとっても貴重な資料となることは間違いありません。

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