河内晩柑

河内晩柑：和製グレープフルーツの希少価値

河内晩柑は、熊本県で発見された柑橘類の一種です。愛媛県南予地方や九州南部で盛んに栽培されており、特に愛媛県愛南町は日本一の生産地として知られています。

その歴史は古く、昭和10年に熊本県で発見された自生種に遡ります。当初はザボンの仲間と考えられていましたが、最新のゲノム解析により、弓削瓢柑の変種である可能性が高いことが判明しました。名前の由来は、発見地である熊本県飽託郡河内村（現在の熊本市西区河内町）と、収穫時期が晩秋から初夏にかけてと遅いことから来ています。

外観や味わいはグレープフルーツに似ていることから、「和製グレープフルーツ」とも呼ばれています。5月に開花し、翌年の8月頃まで樹上に実がつくという、他の柑橘類にはない特徴を持っています。このため、収穫時期が2月から8月と非常に長く、国産柑橘の端境期である4月から8月にかけて市場に出回る貴重な存在となっています。

愛南町では、1970年代から河内晩柑の栽培が始まり、現在では「愛南ゴールド」というブランド名で広く知られています。他にも、「美生柑（みしょうかん）」、「宇和ゴールド」など、様々な呼び名が存在します。これは、愛南町の地域名や、かつての町名に由来するものです。

河内晩柑の生産量は年々増加しており、2005年の7,078トンから2020年には11,203トンにまで増加しました。その内訳は、愛媛県が約73％、熊本県が約23％を占めています。

河内晩柑の栽培と特徴

河内晩柑の栽培には、いくつかの特徴があります。まず、晩成の柑橘であるため、越冬が必要となります。そのため、温暖な気候と、ほとんど降霜のない地域での栽培が適しています。

収穫時期は長く、2月頃から8月頃まで続きますが、2～3月頃は酸味が強い傾向があるため、貯蔵して酸味を減らしてから出荷する生産者もいます。春から夏にかけては、糖度、酸度、果汁量が徐々に低下し、シャキッとした食感に変化していきます。この変化は、暑い時期に適した食味・食感として受け入れられています。

また、珍しいことに、収穫前の果実の隣で花が咲いたり、小さな実が育っていたりする様子が見られます。これは、農薬散布の時期を制限する要因にもなっており、特に梅雨時期以降は、見た目が悪いものも多くなります。「回青」と呼ばれる現象で、果実がやや青く変色することがありますが、これは植物の生理現象で問題ありません。

一方、栽培上の大きな課題として「後期生理落果」があります。11月以降、気温が下がると、果実が落下してしまう現象です。急激な気温低下や乾燥、強風などが原因となります。このため、無農薬栽培は困難とされています。また、柑橘類の中では大木になる品種で、放任するとすぐに徒長する傾向があります。

注目される成分：オーラプテン

河内晩柑には、オーラプテンという成分が他の柑橘類に比べて多く含まれています。オーラプテンは、脳の認知機能の維持に効果がある成分として、近年注目を集めています。この点も、河内晩柑の魅力の一つと言えるでしょう。

河内晩柑は、その独特の栽培方法、長い収穫期間、そして健康に良い成分を含むなど、多くの魅力を持つ柑橘類です。これからも、生産量の増加と、更なるブランド化が期待されています。

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