洋介犬

洋介犬（ようすけん）

日本の漫画家。兵庫県丹波市出身、京都府を拠点に活動している男性である。かつて商業媒体で活動する際には「うえやま洋介犬（うえやまようすけ）」というペンネームを使用していたが、2013年4月以降は現在の「洋介犬」に統一している。この筆名は字面とは異なり、「ようすけん」と読ませる。自身の自画像として、眼鏡をかけた犬のキャラクターを用いることでも知られている。

来歴と活動

幼少の頃から漫画家を志し、キャリアの初期には4コマギャグ漫画家としてデビューした。しかし、怪談や戦国史に対する深い関心から、やがてホラージャンルへと主軸を移していく。20代後半には、自身で取材したり、インターネットを通じて募集したりした実話怪談や創作怪談を題材に、ショートホラー漫画や幽霊画を公開するブログ『誘怪犯』を開設した。このブログは後に『イヌギキ』と改称され、ホラー作品が大きな反響を呼び、一時は1日あたり3万件のアクセスを記録。2012年には累計アクセス数が2000万件を超えるほどの人気ブログとなった。ブログでの成功は、2007年にブログ掲載作品と描き下ろし作品を収録した単行本『誘怪犯』の刊行へと繋がった。

ブログでの活動を続けながら、商業媒体でも精力的に作品を発表。オンラインでは講談社のウェブコミック配信サイト『MiChao!』にて『ヤミツキ 〜いのりの心霊日記〜』を連載し、紙媒体でも数多くのホラー専門雑誌で作品を発表している。また、漫画執筆に留まらず、2009年からは怪談を語るライブ・イベントである「怪談社」にも参加するなど、多角的に怪談文化に関わっている。

ホラージャンル以外では、竹書房のウェブマガジン『エッセイコミックWEBマガジン ゆるっとcafe』において、自身の妻であるBL・TL小説家の菜波氏が腐女子であることをネタにしたギャグ・エッセイコミック『くさったよめがあらわれた!』を2011年から連載。この作品も2012年に単行本化され、ホラー作品とは異なるユーモラスな一面を見せた。

個人的な出来事として、2024年10月24日には、自身や家族に危害を加える内容の脅迫メールが届いたことを公表し、これを受けて京都府警に相談したことを明らかにしている。

作風の特徴

洋介犬氏の作風は非常に幅広く多様だが、ブログ名に冠された「30秒怪奇妙漫画」が示すように、4コマ漫画を基盤とした短い形式のショートショート漫画を得意としている点が大きな特徴である。制作ペースも速く、連載作品においても一話完結型やオムニバス形式の構成が多く見られる。一方で、『ＬＡ×ＬＡ×ＬＡ』のような比較的長期にわたるストーリー漫画も手がけている。

描かれるテーマや内容は多彩を極める。読者の心理に深く影響を与えるサイコ・ホラーや、超常現象、人間の理解を超えた不条理な出来事を扱ったもの、実際にあった話を基にしたドキュメンタリー風あるいはモキュメンタリー風の作品、さらには現代社会の出来事を風刺的に描く時事ネタを取り入れた作品などがある。作風のトーンも幅広く、読後に後味の悪さを残すような不気味さを追求した作品から、現実社会の不条理や理不尽を鋭く描き出し、戒めや因果応報といった教訓的な要素を含む話、さらにギャグの要素を巧みに取り入れたブラックユーモア色の強い作品まで存在する。

自身の作品制作において、読者が恐怖をより身近に感じられるよう、日常生活の中に潜む些細な違和感や奇妙な出来事を物語のフックとして意識的に組み込んでいると語っている。このアプローチは「お持ち帰り系ホラー」とも評され、日常のふとした瞬間に作品の恐怖が呼び覚まされるような、独特の読後感を生み出している。

主な作品

これまでに数多くの連載作品と単行本を刊行している。ブログで人気を博した作品をまとめた初期のホラー作品集『誘怪犯』や『誘怪犯 〜紅〜』は、氏のホラー漫画家としての知名度を確立する上で重要な役割を果たした。その後も『イマワノキワ』、『軍師×彼女』、『歴女るの！』といった多様なジャンルの作品を発表。特に長期にわたる連載となったホラー作品としては、『外れたみんなの頭のネジ』、『ジゴサタ〜地獄の沙汰もお前しだい』、『世界が滅んだその後で』、『カミ憑き我慢を決壊す』などが代表的な作品として挙げられる。近年も『反逆コメンテーターエンドウさん』、『JC、殺人鬼やめました』、『死神の王とその娘たち』、『LaLaLa…〜彼女の好きなカノジョ〜』、『悪魔の論破〜信じてはいけないあの娘のために〜』、『メメ〜大野こここはなぜ眼球に殺されるに至ったか〜』、『黒懺悔』、『パラウドで逢いましょう』など、精力的に新作を発表し続けている。漫画作品以外では、自身の経験や知見をまとめた著書『#新人漫画家と編集者 SNSでバズ連発の漫画家が教えるヒット術』も刊行しており、その活動は多岐にわたる。

もう一度検索