海音寺潮五郎

海音寺潮五郎について

海音寺潮五郎（1901年11月5日生まれ、1977年12月1日没）は、日本の小説家であり、多くの歴史小説を著した作家です。本名は末冨東作で、鹿児島県伊佐郡大口村（現伊佐市）に生まれました。彼の作品の中には、史伝文学の復興に大きく貢献したものが多く存在し、特に西郷隆盛を主人公とした作品には強い情熱を注いでいました。

幼少期と教育

幼少期から大きな体格の持ち主であった海音寺は、同級生よりも早く小学校に入学しました。しかし、その後の学校生活は彼にとって決して楽なものではなく、年上の同級生に追いつけない苦労が多かったと語っています。これが後の文筆活動の動機の一つともなりました。國學院大學高等師範部国漢科を卒業後、中学の教師として勤務しながら創作を始めました。

作家デビュー

彼は1934年に作家デビューを果たし、次第に歴史小説の世界で主導的な存在となりました。1936年には「天正女合戦」と「武道伝来記」が評価され、第3回直木賞を受賞しました。さらに、彼の代表作には弟子とも言える司馬遼太郎によって結末が付けられた史伝『西郷隆盛』が挙げられます。

筆名の由来

「海音寺潮五郎」という筆名には特別な由来があります。彼は1929年に夢の中でこの名前を思いつき、その後小説に応募する際に使用しました。彼は夢の中で自分の名前を聞いたと語っており、その結果、ペンネームが生まれました。この名前に関連して彼は、自身の内面的な感情を反映させようとしたとされています。

史伝文学の復興

海音寺はかつて失われていた史伝文学の復興に力を尽くしました。彼は、歴史教育の重要性を認識し、作品を通じて日本の歴史に興味を持つことの大切さを説いていました。「武将列伝」や「悪人列伝」など、多くの歴史的な人物を取り上げた作品を執筆し、日本人にとっての歴史の常識を再生させようとしたのです。

直木賞とその後の活動

海音寺は直木賞を受賞した際、受賞を辞退する意向を示しましたが、周囲の説得を受けて受賞を承諾しました。この際、彼の作家活動は飛躍的に進展し、後に直木賞選考委員に就任します。特に司馬遼太郎に対しては高い評価を与えていた一方、他の作家には厳しい評価を下したことでも知られています。

西郷隆盛への思い入れ

海音寺は西郷隆盛に強い魅力を感じ、彼に関する多くの作品を執筆しました。西郷は彼の故郷の英雄であり、正しい西郷像を描くことで後世に誤解を与えないよう努力しました。特に長編『西郷隆盛』は、彼の最も大きな目標であり、作家としての全精力を注ぎ込む作品となりました。

引退宣言と死後の活動

1969年に引退宣言を発表した海音寺は、その後も未完の作品を残したまま1977年に亡くなりました。彼の死後、彼の作品や関連資料を保存するために「海音寺潮五郎記念館」が設置されましたが、運営難によりその後閉館となりました。彼の作品は今も多くの人々に愛され続けており、日本文学の一部として重要な位置を占めています。

海音寺潮五郎は多くの歴史小説を通じて、我々に日本の歴史を深く知るための扉を開いてくれました。彼の作品に込められた思いは、時代を超えて今なお響いています。

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