滝夜叉姫

滝夜叉姫（たきやしゃひめ）

滝夜叉姫は、日本の伝説に登場する妖術使いであり、平将門の娘とされています。彼女は本来、五月姫（さつきひめ）または滝姫（たきひめ）という名前で知られています。彼女に関する情報は、古い文献や伝説を通じて今に伝わっています。

概要

滝夜叉姫の物語は、平将門の娘である如蔵尼をモデルにしており、山東京伝の読本『善知安方忠義伝』で初めて語られたと考えられています。この伝説には、彼女の父、平将門が討たれた後の彼女の人生と、その後の行動が含まれています。福島県に位置する恵日寺には、如蔵尼の墓碑が存在し、そこには『滝夜叉姫が将門の死後に再興を図ったが失敗し出家した』との記録が残されています。

歴史的背景として、天慶の乱の際に平将門が討たれ、その一族が滅びたことが彼女の物語のターニングポイントとなっています。生き残った五月姫は、父の無念を晴らすべく怨念を抱き、貴船明神の社に月夜に訪れるようになります。そこで彼女は貴船明神の荒御霊から声を聞き、妖術を授かります。この時、五月姫は滝夜叉姫へと変貌を遂げたのです。

滝夜叉姫は、下総国へ戻り相馬の城にて手下を集め、朝廷転覆の反乱を計画しました。しかし、すでに朝廷側は彼女を成敗する命令を出しており、大宅中将光圀や山城光成が動き出していました。相馬の城で追い詰められた滝夜叉姫は、ドクロの化け物を召喚し、壮絶な戦闘が繰り広げられますが、彼女は最後には敗北を喫します。伝説によれば、滝夜叉姫は死後、父・平将門のもとへ昇天したとも、また尼寺に隠れ生涯を送ったとも言われています。

現在、茨城県つくば市の松塚近くには滝夜叉姫の墓とされる場所があります。地元の伝承では、東福寺周辺に存在する小さな丘が彼女の墓として伝えられています。

題材とした創作

滝夜叉姫は日本の文化や芸術に多くの影響を与えてきました。特に歌舞伎では、彼女の故事を取り入れた数作品が存在します。1836年に初演された『忍夜恋曲者』では、滝夜叉姫が傾城如月に変身し、大宅中将光圀と対立する姿が描かれています。また、相馬の古内裏では、彼女の背景を描いた歌川国芳の名作もあります。

その他にも、夢枕獏による小説『陰陽師 瀧夜叉姫』や、その漫画化、2020年のテレビドラマ版など、さまざまな作品に登場しています。さらに、アニメ『鬼灯の冷徹』や『鬼切丸伝』でも言及されています。音楽の分野でも、Unlucky Morpheusのアルバムや楽曲に彼女の存在が取り入れられています。

滝夜叉姫の物語は、日本の歴史や文化に深く根ざしており、今なお多くの人々に愛され続けています。彼女の伝説を通じて、感情や人間の欲望、怨念といったテーマが表現され、観る者や聴く者に様々な感情を呼び起こします。

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