災害医療

災害医療とは

災害医療とは、地震や火災、津波、豪雨などの災害が発生し、医療提供に必要な能力を上回る患者が発生した際に行われる急性期の医療です。日本では、この医療を体系的に行える常設組織は、日本赤十字社と自衛隊の二つのみです。また、特別な研修を受けた医療チーム（DMATやJMAT）も被災地への医療支援を行いますが、これらのチームは被災地外から派遣されるため、現場到着や展開に時間がかかります。

災害医療と救急医療の違い

災害医療と救急医療は根本的に異なります。救急医療は通常の医療環境のもとで患者に必要な医療を提供しますが、災害医療は急速に傷病者が増加する状況で、医療供給が困難になります。停電や断水などが発生することもあり、妨げられた医療環境のもとで、患者を限られた資源で効率的に救助する力が求められます。特に、災害時には多数の患者が一度に押し寄せるため、トリアージ（優先順位を付けること）の時間と方法が救急医療とは異なり、迅速な判断が必要です。

トリアージの重要性

災害医療では、トリアージが非常に重要です。通常、救急医療では患者1人につき数分間をかけて判断しますが、災害時には患者の数が極端に多くなるため、一人の患者に対する時間を短縮し、効率よく多数の患者に対処する必要があります。例えば、STANDARD（簡易・迅速トリアージ）手法を用い、30秒以内でトリアージを完了できるようにすることが求められます。

現場の医療体制

災害が発生すると、現地の公立病院や指定された災害拠点病院が中心となり、すぐに医療を開始します。これに対し、DMATやJMATは被災地外から来るため、現場の医療体制は遅れる可能性があります。しかし、地域医師会に所属する医師が現場において初期の救護活動を行うこともあります。

災害医療コーディネーター

災害医療においては、適切な調整・システムが必要です。都道府県知事によって任命される災害医療コーディネーターは、ミーティングの開催や医療機関との調整を行い、災害時に円滑な医療提供を確保します。災害の発生から48時間以内はDMATが調整役となり、体制が整い次第コーディネーターが役割を引き継ぎます。

災害時の健康問題

災害時の避難生活では、見知らぬ他者との共同の生活により、心理的ストレスが高まり身体的な健康問題が生じます。適切な生活環境の改善と心理的サポートが、健康問題を軽減する上で重要です。例えば、体調不良や精神的障害といった問題が、避難生活の影響によって引き起こされることが多いです。

医療資機材の備蓄と開発

災害医療においては、資機材の準備も重要です。持ち運びがしやすく、強度があり、電源なしでも機能する医療機器が理想的です。さらに、価格も比較的安価で、入手可能なものが望ましいです。各医療機関では、定期的に備蓄品の見直しを行いながら、災害に備えています。

日本における災害医療の歴史

日本における災害医療の歴史は古く、古事記において災害による治療についての記述が見られます。近代においては、火山噴火や大地震など様々な災害において、医療チームが派遣されるなど、災害医療の制度が発展してきました。特に、20世紀の関東大震災などが災害医療の重要性を高め、今日に至るまでさまざまな取り組みが進められています。災害医療の準備と実践は、今後もますます重要なテーマといえるでしょう。

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