炎のランナー

炎のランナー

『炎のランナー』は、1981年に公開されたイギリスのドラマ映画で、ヒュー・ハドソンが監督を務めています。この作品は、第54回アカデミー賞の作品賞を受賞し、当時のイギリス社会における権威主義や差別といった問題を描きつつ、イギリスの尊厳をテーマにしています。

概要

この映画は、実在の二人のアスリート、ユダヤ系のハロルド・エイブラハムスと、スコットランドの牧師エリック・リデルに焦点を当てています。物語は1919年に始まり、ハロルドはケンブリッジ大学、エリックはエディンバラの伝道活動に取り組む中で、1924年のパリオリンピックへと進んでいきます。エイブラハムスは、競技を通じて自身のアイデンティティを確立しようと奮闘する一方で、リデルは神のために走るという信念を持っています。

物語には実話が基になっていますが、エイブラハムスとモンタギューの友情、エイブラハムスと恋人シビルの関係、リデルの妹との確執など、脚色された要素も多く見られます。ヴァンゲリスの組曲「タイトルズ」は特に有名で、日本のテレビ番組でも多く使用されています。この曲は、オリンピックや競走のゴールシーンで頻繁に流れており、作品の象徴ともなっています。

原題の由来

本作の原題「Chariots of Fire」は、ウィリアム・ブレイクの『ミルトン』から取られています。この詩では、旧約聖書でエリヤが炎の戦車に乗っているシーンを描いており、映画全体のテーマとリンクしています。映画のラストでは、聖歌隊によって「エルサレム」が歌われ、故ハロルド・エイブラハムスを追悼するシーンが印象的です。

あらすじ

物語は1978年のロンドンに始まり、ハロルド・エイブラハムスの追悼礼拝のシーンで進行します。1919年、ユダヤ人である彼はケンブリッジ大学に入学し、ランニングに情熱を注ぎます。彼は「ケンブリッジ大学4人組」として名を馳せ、競技を通じて差別や偏見に立ち向かいます。

スコットランド出身のエリック・リデルもまた、神への信仰を持ちながら走ることに挑みます。妹のジェニーは彼の競技活動に反対しますが、家族は彼の才能を支援します。1923年、エリックとそんなハロルドは互いに激しい競争を繰り広げ、そのことが二人の運命を大きく変えていきます。

ハロルドは名コーチ・サム・ムサビーニとの出会いを果たし、彼の指導のもとで成長していきます。一方のエリックは、伝道活動を進めながらオリンピック出場を決意します。しかし、エリックの信仰が勝るため、キリスト教の安息日と五輪の日程の対立が彼の果たすべき選択を難しくします。

1924年、パリオリンピックが迫る中、イギリスチームはアメリカの強豪選手たちとの戦いを控えています。エリックは、神への忠誠を貫いて競技を放棄する一方、ハロルドは100m競技に挑む決意を固めます。緊迫したレースの中で、ハロルドは見事に金メダルを獲得し、エリックも400mで優勝を果たします。二人はそれぞれの信念と目標を貫き、個々に栄光を手に入れました。物語の終わりには、二人がそれぞれの道でヒーローとして讃えられた姿が描かれています。

評価と影響

本作は、1999年には英国映画協会の「Top 100 British films」で19位、2006年にはアメリカン・フィルム・インスティテュートの「感動の映画ベスト100」で100位に選ばれ、多くの人々に感銘を与えました。また、オリンピックを記念して舞台劇としての制作もなされ、さらに多くの新しいファンを生み出しています。映画を通じて描かれる信仰や人間関係、そして勝利への道のりは、今なお多くの人の心に響いています。

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