犬養部

犬養部（いぬかひべ）についての考察

犬養部は日本の古代において、犬を飼いその能力を生かして中央政権に貢献した一族であり、その役割や歴史は非常に興味深いものである。一般的には、狩猟と守衛のために犬を養うことがその目的とされている。これは、日本書紀の記述によるもので、安閑天皇の時代にさかのぼる。具体的には、538年に屯倉の設置が行われ、そこに犬養部が組織されたと考えられている。

犬養部の成立と意義

犬養部の設立は、屯倉と密接に関連しているとされ、特に防衛面での役割が重要視されている。屯倉は、食物の集積や管理を行うための施設であり、その保護が求められたため、犬養部はそれに従事した可能性が高い。実際に、歴史的な記録からは犬養部が町の安全を守る役割を持っていたことが推測されている。その存在は、屯倉の発展に貢献したとも考えられ、古代日本における社会組織の基盤を築いたと言える。

犬養部の正確な設立時期は不明であるが、『日本書紀』に登場する地名から6世紀前半にその存在があったとする説が有力である。屯倉の管理と犬養部の役割が密接で、さまざまな歴史的事実が統合されて理解されることが期待される。さらに、屯倉の設置が後の国・郡・里制の基礎になるとの見解も示されている。これは、犬養部が単なる職業集団に留まらず、国家の土台形成にも寄与していたことを示している。

犬養部の指導者たち

犬養部の統率者には、県犬養連、海犬養連、若犬養連、阿曇犬養連、辛犬養連、阿多御手犬養の6つの氏族があった。これらの氏族はそれぞれ異なる背景を持ち、歴史の中で重要な役割を果たした。特に県犬養連、海犬養連、若犬養連は有力な上級伴造とされ、彼らの影響力は非常に高かった。県犬養氏の著名な人物には、藤原不比等の妻となった三千代や、聖武天皇の息子の母である広刀自などがいる。

このように、犬養部は信頼性の高い戦力を持つ一族であり、安閑天皇の時代から奈良時代中期にかけて大きな影響を持っていたことが伺える。

その後の犬養部

犬養部は、初めは屯倉の守衛としての役割から始まったが、次第に軍事的な能力を発揮するようになった。武装化し、犬を使うことから、さらに軍事氏族としての色合いを強め、多くの歴史的事件にも関与していくこととなる。特に、乙巳の変においては海犬養連の勝麻呂や若犬養連の網田が名を連ね、彼らが持つ軍事的背景が重要であったことが証明されている。

犬養部の物語は、彼らの存在が単なる犬の飼育に留まらず、より広範な政治や軍事の動きに影響を与えたことを示しており、古代における家族や氏族の役割の重要さを物語る貴重なケーススタディといえる。

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