玉来駅

玉来駅：歴史と静寂が織りなす豊肥本線の駅

大分県竹田市玉来地区に位置するJR九州豊肥本線の玉来駅は、昭和初期の開業以来、地域に寄り添ってきた歴史ある駅です。かつては貨物輸送が盛んに行われ、賑わいを見せていましたが、時代の変遷とともにその姿は変化を遂げてきました。

開業から貨物輸送の盛衰

玉来駅が開業したのは1925年（大正14年）11月30日。豊後竹田駅から延伸した犬飼線の終着駅として誕生しました。その後、1928年（昭和3年）12月2日には宮地駅まで路線が開通し、豊肥本線の途中駅となりました。昭和30年代までは、地域産業を支える貨物輸送の中心地として栄え、多くの貨物がこの駅を出入りしていました。しかし、1962年（昭和37年）1月の営林署閉鎖をきっかけに貨物取扱量は激減。時代の流れとともに、駅の役割も変化していくこととなります。

無人駅化と駅舎の移転

貨物輸送の減少に伴い、1971年（昭和46年）10月1日には貨物取扱いが廃止され、無人駅となりました。その後、1987年（昭和62年）4月1日の国鉄分割民営化により、九州旅客鉄道（JR九州）が駅を継承します。1993年（平成5年）3月1日には、近隣の道路改良工事に伴い、駅舎が約20メートル東へ移転。同時に駅前広場も整備され、現在の駅舎が誕生しました。

静かな佇まいの駅舎

現在の駅舎は、木造平屋建てのシンプルな構造です。特徴的なのは、そのデザイン。日本三大稲荷の一つとされる扇森稲荷神社をモチーフとしており、社務所を思わせる趣のある外観となっています。駅舎内には、利用客のための待合室とトイレが備えられています。単式ホーム1面1線のシンプルな構造で、のどかな風景の中に溶け込むように静かに佇んでいます。

利用状況と周辺環境

玉来駅の利用状況は、近年減少傾向にあります。2012年度の1日平均乗車人員は17人と報告されています。駅周辺は静かな住宅街が広がり、駅前には僅かな民家が見られるのみです。駅前から県道を約400メートル進むと、玉来地区の中心地へと至ります。周囲には自然豊かな風景が広がり、のどかな雰囲気の中で、ゆっくりとした時間が流れています。

現在と未来

玉来駅は、かつての賑わいから静寂へと変化を遂げ、現在は無人駅としてひっそりとその役割を担っています。しかし、その歴史と、静けさの中に感じられる温もりは、今もなお多くの人々の記憶の中に刻まれていることでしょう。扇森稲荷神社を模した木造駅舎は、地域のシンボルとして、これからも静かに時を刻み続けることでしょう。 周辺の自然環境と調和した、この小さな駅は、豊肥本線の歴史と、地域の未来を繋ぐ大切な存在であり続けています。

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