生き胴

生き胴（いきどう）

生き胴とは、江戸時代において適用された特異な死刑方法の一つです。この処刑方法は、その名の通り、罪人が生きたまま胴体を斬られるという非常に残酷なものでありました。具体的な手順は、刑場に土を盛り上げて「土壇場」と呼ばれる場所を設け、目隠しをした罪人をうつぶせに横たえます。そして、2人の斬手が同時に罪人の首と胴を斬りつけるという形式が取られました。

生き胴が執行された事例としては、延宝8年（1680年）や元治年間（1864年から1865年）の記録に残っています。最初の事例は、会津藩において行われたもので、人妻を誘拐して逃亡中に殺害した弥蔵という男が処罰されました。このケースでは、藩の重役は弥蔵が悪人であると判断し、藩主の承認なしに生き胴を決定したのです。その際、罪人の身分や行為の悪質さについて詳細に協議されたとされています。

他にも、承応4年（1655年）に騙りの罪で捕まった8人のうち3人は、藩主の刀の切れ味を試すために生き胴にされたと考えられています。このように、生き胴は単なる刑罰としてだけでなく、時には武士の技術や道具の実験とも関連して行われることがありました。

金澤藩でも同様の処刑が行われ、18世紀後半まで続いていました。特に、宝暦13年（1763年）には、白銀屋与左衛門が盗賊と博打、密通の罪で生き胴にされました。また、明和7年（1770年）には、主人の姉と密通し、その後彼女を刺し殺した東方源太夫もこの刑に処されました。時代が進むにつれ、処刑の方法やその向き合い方も変化していく中で、この生き胴の残酷さは目を引くものでした。

このように、生き胴は江戸時代の中でも特異な死刑方法で、当時の社会や司法の暗い一面を映し出しています。禁門の変直前の元治元年（1864年）には、尊攘派の藩士福岡惣助もこの処刑方法の犠牲者となりました。彼は長州藩士と結託し偽りの上書きを出したことが原因で、藩主の逆鱗に触れ、生き胴にされることになったのです。

生き胴による刑罰は、今日では残酷な歴史として語り継がれていますが、これらの実例は当時の社会状況や法制度への深い洞察を与える貴重な資料とされています。江戸時代の司法制度を理解するための一助として、生き胴のプロセスや背景を知ることは重要です。

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