田部井淳子

田部井淳子 - 女性初のエベレスト登頂者

田部井淳子（たべい じゅんこ）は、日本の登山界において、特に女性の登山家としての先駆者的存在として知られています。1939年に福島県田村郡三春町で生まれ、彼女の登山への関心は、小学校4年生のころ、栃木県の茶臼岳に登ったことから始まったと言われています。彼女は福島県立田村高等学校を卒業後、1962年に昭和女子大学の英米文学科を卒業しました。その後、登山活動を本格化させ、社会人の山岳会に参加し始めます。

田部井は1965年に、佐宗ルミエとともに女性ペアによる谷川岳一ノ倉沢の積雪期登攀に成功。その後、彼女の登山活動はますます活発となり、1969年には女子登攀クラブを設立、女性だけでの海外遠征を掲げました。翌年、彼女はアンナプルナIII峰に登頂し、女性初の偉業を成し遂げます。

最も注目すべきは1975年、田部井がエベレストの登頂に成功したことです。彼女は日本女子登山隊の副隊長としてこの登山に参加し、エベレスト8848メートルの高みに立つという、女性として初の歴史的瞬間を作り上げました。この偉業によって、田部井はネパール王国からの最高勲章や文部科学省からの賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝きました。さらに、1988年には福島県民栄誉賞を受賞し、彼女の業績は広く認知されました。

1992年には、エルブルス山に登頂し、女性として世界初の七大陸最高峰制覇を達成しました。田部井はその後も登山を続け、内閣総理大臣賞など多くの賞を獲得しました。2000年には九州大学大学院を修了し、研究テーマはエベレストの環境問題に関するものでした。彼女は山岳環境保護団体HAT-Jの代表としても活動し、登山に関わる環境問題に取り組みました。

最後の登山は2016年、福島県雄国山で行われた小学生向けのネイチャーカレッジであり、これが彼女の最後の登頂となりました。その後の夏には被災者支援活動として富士山登山にも参加しましたが、7合目で断念。その直後の10月に、腹膜癌で77歳で彼女は生涯を閉じました。

田部井淳子の功績は、登山界において女性の地位向上を促し、多くの人に夢を与えるものでした。2018年にはネパールで社会貢献者として表彰され、2019年には冥王星の山に「Tabei Montes」という名が冠されるなど、彼女の名前は今もなお多くの人に記憶されています。彼女の著作も多く、エベレストに関する体験を描いた『エベレスト・ママさん 山登り半生記』など、多くの人々に山の魅力を伝え続けています。田部井の精神は、挑戦し続けること、環境を大切にすることの重要性を教えてくれています。

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