直通急行

直通急行：戦前私鉄を駆け抜けた列車種別

戦前の日本において、いくつかの私鉄会社で用いられていた「直通急行」という列車種別。その歴史や運行状況は、会社によって異なっていました。本稿では、代表的な事例である京阪電気鉄道、名古屋鉄道、近畿日本鉄道における直通急行について解説します。

京阪電気鉄道・京阪神急行電鉄

京阪電気鉄道では、1934年（昭和9年）9月1日、新京阪線と十三線の直通列車として、十三駅～京阪京都駅間に「直通急行」を設定。淡路駅～京阪京都駅間では、天神橋方面の急行と併結運転されました。その後、1938年（昭和13年）10月1日の改正で一旦廃止されましたが、1941年（昭和16年）11月1日の改正で復活。平日には天神橋方面の急行と併結、休日は単独運行という体制がとられました。

1943年（昭和18年）10月1日、京阪電気鉄道と阪神急行電鉄の合併に伴い、京阪神急行電鉄による運行となりました。そして1944年（昭和19年）4月8日、宝塚本線との乗り入れにより、梅田～京都間の直通運転が実現しました。しかし、戦災の影響で1945年（昭和20年）6月に運行休止。同年10月10日に十三～京都間で運転を再開しましたが、この時点では「急行」と種別が変更されていました。

名古屋鉄道

名古屋鉄道では、1940年（昭和15年）頃～1944年（昭和19年）頃、「直通急行」が設定されました。高山本線直通列車が土休日運転から終日運転に変更された際に、従来の特急から改称されたものと思われます。新名古屋駅開業時の停車駅は、新名古屋駅、岩倉駅、古知野駅（現・江南駅）、犬山橋駅（現・犬山遊園駅）でした。

近畿日本鉄道

近畿日本鉄道では、阪伊間臨時列車の「伊勢志摩号」に当初「直通急行」の種別が用いられました。しかし、急行との誤乗を防ぐため、後に「高速」と改称されました。

まとめ

以上のように、直通急行は各社で設定時期や運行形態、そして廃止時期も異なっていました。いずれも、複数の路線を直通運転する急行列車として設定された種別であることが共通点です。戦時下の混乱や、運行効率の向上などを背景に、種別変更や廃止に至った事例が多いことが分かります。また、この「直通急行」という種別名は、後世の私鉄においてはほとんど使用されておらず、戦前私鉄特有の列車種別と言えるでしょう。

他の類似種別

なお、阪和電気鉄道では「直急」という、直通と急行を組み合わせた列車種別が用いられていたことも付け加えておきます。

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