真夏のオリオン

2009年 6月13日に公開された日本映画です。池上司による小説『雷撃深度一九・五』を原作とし、太平洋戦争末期における潜水艦の激しい戦闘と、現代に生きる家族の物語を、時を超えて交錯させながら描いています。特に、祖母が遺した一枚の楽譜が、封印されていた過去の真実を明らかにする鍵となります。

物語

物語は現代から始まります。主人公である倉本いずみの元に、アメリカから送られてきた手紙に添えられていたのは、一枚の古い楽譜でした。それは、いずみの祖母である志津子が、船乗りたちが古くから吉兆をもたらすと信じていた真夏の夜空に輝くオリオン座に、夫である倉本孝行への深い想いを託して書き上げたという楽曲、「真夏のオリオン」のものでした。この楽譜がなぜ遠いアメリカで保管されていたのか、その理由を探るため、いずみは祖父が潜水艦に乗っていた頃の元乗組員、鈴木勝海を訪ねます。

鈴木が静かに語り始めたのは、64年前の夏、潜水艦イ-77の艦長であったいずみの祖父・倉本孝行と、アメリカ海軍の駆逐艦パーシバルとの間で繰り広げられた、まさに死闘と呼ぶべき戦いの記憶でした。真夏のオリオン座が静かに見守る中で行われた、知略と勇気が交錯する壮絶な潜水艦戦。そして、その戦いの果てに真夏のオリオン座が照らし出した意外な結末が、現代を生きるいずみに伝えられます。この映画は、過去の悲劇的な出来事が、どのように現代にまで影響を与え、人々の心に残り続けるのかを描き出します。

登場人物

物語の中心となる人物として、太平洋戦争末期に潜水艦イ-77の艦長を務める倉本孝行（演：玉木宏）が描かれます。海軍少佐でありながら部下からの厚い信頼を集める彼は、極限状況下でも冷静な判断力と人間性を失いません。現代のパートでは、倉本孝行の孫娘である倉本いずみ（演：北川景子）が登場し、過去のパートではいずみの祖母であり、孝行の妻であった有沢志津子（演：北川景子・二役）が、夫を案じる姿や楽曲に想いを込める姿が描かれます。

イ-77潜水艦には、田村俊雄水雷長（演：益岡徹）、中津弘航海長（演：吹越満）、桑田伸作機関長（演：吉田栄作）、坪田誠軍医長（演：平岡祐太）といったベテランから、若き回天搭乗員、遠山肇（演：黄川田将也）や久保憲明（演：三浦悠）まで、様々な立場の乗組員たちが乗艦しており、それぞれが葛藤や決意を胸に秘めています。現代でいずみに過去を語る鈴木勝海（青年期：太賀、現代：鈴木瑞穂）は、かつてイ-77の水雷員でした。敵対するアメリカ海軍駆逐艦パーシバルのマイク・スチュワート艦長（演：デイビッド・ウィニング）と副長のジョセフ・フリン（演：ジョー・レーヨム）も、単なる敵としてではなく、プロフェッショナルとしての矜持を持つ人物として描かれます。また、イ-81潜水艦の艦長であり、志津子の兄である有沢義彦（演：堂珍嘉邦）も登場します。

なお、劇中に登場する潜水艦イ-77およびイ-81は、本作のための架空の艦名であり、実在しません。

スタッフ

本作は、篠原哲雄が監督を務めました。脚本は長谷川康夫、飯田健三郎が手掛け、原作の脚色および映画化原作には福井晴敏が参加しています。音楽は岩代太郎が担当し、緊迫感あふれる戦闘シーンと心温まる人間ドラマの両方を彩る印象的な楽曲を提供しました。主題歌は、いつかが歌う「願い星〜I wish upon a star〜」です。撮影は山本英夫、美術は金田克美が担当するなど、実力派のスタッフが集結し、リアリティのある映像表現を実現しています。

製作と配給

本作は、「真夏のオリオン」パートナーズとしてテレビ朝日、東宝、博報堂DYメディアパートナーズなど多数の企業が製作に名を連ね、東宝の配給により全国公開されました。

真夏のオリオン